よねっきー

モデル 雅子 を追う旅のよねっきーのレビュー・感想・評価

モデル 雅子 を追う旅(2019年製作の映画)
4.1
モデル「雅子」についてのドキュメンタリーだ。詳しくはあらすじを参照のこと。

飾らない映画だと思った。パンで例えるとバター塗っただけみたいな感じだ。でも、スーパーの食パンにバターを塗ったやつと、お母さんが「これはお隣さんからもらったいいパンなのよ」とテーブルに持ってくるパンにバターを塗ったやつとでは全然違うのだ。当然、モデルの雅子がスーパーの食パンなわけがない。

膨大な量のインタビューと資料を繋げて、20歳頃から50歳までの雅子さんの姿を、その人生を、組み立てていく。辿っていく。もう取材ってより研究だ。研究レポート。
みんなが「あの人はね」と監督に語って聞かせる様子は、美しい空想上の動物の話をしてるみたいだ。別の2人の聞かせる話がたまにリンクして、そんな人だったんだ、と輪郭がはっきりしていく。人生を追うに連れて雅子さんの画質が上がっていく。画質に関しては当然カメラが彼女の人生に合わせて進化してるからなんだけど、それだけじゃないよね。人を研究することの面白さを描いた映画でもあると思う。

晩年にかけて輝きを増す雅子さんは素敵だ。「あんな人いないよ」とみんなが言う。いつも日傘をさして、サングラスをかけて、手袋をして、美を保ち続ける。美のために生きてる。いないだろうなあ、そんな人は。
完全無欠に見えて、「めっちゃ不器用だよ雅子ちゃん!!」とバレエの先生に言われたり、旦那さんのカメラの前では「嬉しいにゃ」とか言ったりして、面白かったにゃ。

最後に研究を終えて空を体いっぱいにあびる監督のシーンが好きだ。日傘に手袋姿でスキップする雅子さんの映像は、彼女って人をそのまま映してるみたいだ。奇跡的な美しいショットがあるドキュメンタリーっていいよなあ。
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