人物と環境の関係性はこの作品に於いて極めて重要になっている。人物が扁平化になったというか、人物が環境に融合され、同一化されたと言った方が良い。壁に貼られた新聞、写真、(ストーリーに関係のない)昔のニュースに主人公の苦痛が巻き込まれた。
ここで芸術家に与えられる有限な表現空間について考えなければならない。
この映画の強いところは、個人と時代の関係性に新たな描き方を試みたことだ。しかも成功した。
走ったり、止まったり2人から賈樟柯の陰が見られるし、流れているソロ川は姜文の匂いがする。
夜行動物の徘徊趣味。
映画の「場」ーー建築、車両、人混み、湖から空の色、これらが本当の主人公であり、墨が水にとけるように、環境に溶け込むーーこの作品の趣旨はここにある。