蔵なもし

その手に触れるまでの蔵なもしのネタバレレビュー・内容・結末

その手に触れるまで(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

少年アメッドはある導師との出会いにより、イスラム教へ強く傾倒していく。

この傾倒という言葉はネガティブな意味で使われることが多いと、今作で気づかされた気がします。
ようはハマり過ぎの人にやんわり使うんですね。

アメッドは導師との出会いでイスラム教に目覚め、モスクに出入りする内に、導師に小さな頃から世話になっている女教師が背信者であると言われ、その女教師をナイフで殺害しようと試みます。
それに失敗し、彼は少年院に収監されるのですが、それでもまだ女教師の命を狙い続けます。導師が警察に逮捕されたという知らせを聞いても、その決意は揺るぎません。それは観ていて不可解なほど。

これはあくまで推測ですが、彼女はアメッドの初恋の相手だったのではないでしょうか。
途中、同世代の女の子とほのかな恋があるのですが、ムスリムは婚前交渉が禁じられているからと、その子に改宗を迫るシーンがあります。
女教師はアメッドにとって永遠の憧れであり、その恋心がアメッドにとって穢れだったのではないでしょうか。
それを断ち切らなければ真のムスリムになれない。それは人間性を失うことだというのに。

ラストシーン、スタッフロールまでの暗転が少し長く感じました。あれは何を意味していたのでしょう。
作り手としては、結末が決まっているのでしょうけど、僕には「彼がどうなったと思う?彼にどうあってほしい?」と問われているようでした。