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その手に触れるまでのぴのレビュー・感想・評価

その手に触れるまで(2019年製作の映画)
4.2
宗教的に生きることと、宗教を信仰することは違う。
ここでは、「宗教的に生きること=その教えが生活とぴったり貼り付き、疑いようがない状態」と定義したい。
アメッドはイスラム教の教えこそが生の根源となっている。それはちょうど、チルチルとミチルが飼っている鳥が、もともと青かったと気づくことと似ている。
アメッドは導師の教えから、イスラム教の教えこそが生の根源だということに気がつく。
そうして、アメッドの人生は、イスラム教の教え、つまり神の存在証明から背くことが論理的に不可能になる。“神の存在証明をすることこそがアメッドの人生“になってしまったからだ。そのために、イネスを殺すことこそがアメッドの存在理由になってしまう。
だから、たとえばこの映画を「宗教で洗脳されると人を殺しかねない」とか、「宗教って救いにもなるし、毒にもなるよね」とか、そのようなアウトサイダー的な、一歩外に出て観てしまうと、この映画が何を伝えたかったのかが伝わらなくなってしまう。
神は存在に先立つことを描こうとした良作。
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