708

その手に触れるまでの708のネタバレレビュー・内容・結末

その手に触れるまで(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

最近、某宗教のことが連日のように報道されてますが、どんな思想を持っていようと宗教を信仰していようと、人の勝手だとは思うけれど、自分の人生がめちゃくちゃになったり、他人の人生をめちゃくちゃにするようなものは、やはり本当にダメだと思います。その時点で宗教としての役割は破綻してますからね。

ひと月前まではゲームが好きだった13歳の男の子アメッドが、尊敬するイスラム指導者に感化されて過激な思想にのめり込んで、学校の先生をイスラムの敵と捉えて抹殺しようとするのですが、未遂で終わって少年院へ。アメッドは少年院でもこっそりと歯ブラシを床で研いて尖らせて凶器をつくって、面会を希望している先生をまたしても殺そうと計画。でも、それも失敗。危うさは「セイント・モード/狂信」の主人公に近かったです。洗脳されているというか狂信的になっていて、まったく周りが見えない危険な状態。

ラストでアメッドは看守から抜け出して先生の家に向かい、植木を吊り下げている金具を凶器にして、先生を殺そうとして家に忍び込もうと壁をよじ登っていたところ、2階から転落。流血して身動きが取れず、その凶器の金具をコンクリに打ちつけて音を出して、先生に助けてもらって改心するのですが、先生を殺すための凶器の金具が、自分を助けてもらうツールになってしまうというのがなんとも皮肉でした。

ドキュメンタリー出身のダルデンヌ兄弟の作品は、やはり生っぽさがあっていいですね。余計な音楽を排除しながらも、ラストで流れるシューベルト「ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D.960 第二楽章」が際立って美しいです。傷ついた心を治癒するかのような印象。

「その手に触れるまで」っていう邦題が秀逸です。
708

708