このレビューはネタバレを含みます
世間一般では，『純粋な青少年がコーランとムスリム導師に感化され，凶行に至ってしまった』と解題されがちな本作．ですが，私はアメッド君の中に中二病しか見えませんでした．こんばんわ．三遊亭呼延灼です．
そもそも中二病とは、「中学2年生頃の思春期に見られる背伸びしがちな言動」と定義されています．わかりやすく言いますと，13-15歳の人生で最も多感な時期の少年少女達が，嗜んできた文化に異常なまでに影響を受けた結果取られる行動様式，例えば左手に嵌めていたグローブを外す時「ﾌﾌﾌ，ついにこの封印を解き放つ時が来たか」と心の中で囁いてしまうような行為であります．はっきり言って黒歴史ですね．
勿論，趣味と信仰を同一視する事に批判はございましょう．ですが，本邦においては中二病発症者はオカルトをきっかけとして宗教に傾倒する流れは自然ですし，オウム真理教や酒鬼薔薇聖斗のバモイドオキ神の実例もございます．
ベルギーにおいて，移民少年少女達をとりまく文化環境にどれほどの自由度があるのかは不詳でございますが，コーランの教えが最重要項目であることは容易に想像できます．であれば．中二病でイスラム教にかぶれた程度であれば問題はございません．ほっておけば治ります．
本当にそう言い切れるのか？ですって．そりゃまぁ確かなことなんて何一つない現代社会でございますから，どうなるかは断言できませんよ．ですが，2階から落下したアメッド君は，自分の心配をしてくれた先生に感謝しておりましたよね．人として真っ当な行動です．ですから問題ないと判断いたしました．
もし，アメッド君が自分の負傷も顧みず，手に持った金属棒で先生の首元を貫いていたとしたら，それはもう中二病の範疇を超えた狂信者と呼ばざるを得ないでしょう．残念ながらそれは治りません．本作の結末として，そうならなかったことに安堵すると同時に，私が観たかったのは後者なんだよね，ヘタレやがってとも思った次第．
