みかんぼうや

その手に触れるまでのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

その手に触れるまで(2019年製作の映画)
3.7
久しぶりのダルデンヌ兄弟作品鑑賞。多感な時期の少年が周りの大人たちとのコミュニケーションの中で感じ行動する姿を、ダルデンヌ兄弟らしい静かで淡々とした描写と演出で描く。しかし、本作には“宗教”という大きな概念が加わることで、これまで観てきた「少年と自転車」や「息子のまなざし」のストレートな大人と少年の関係性とはまた少し異なるメッセージ性を感じた。

13歳の普通のベルギー人の少年が、ある日突然イスラム教に傾倒し、ずっと少年の面倒を見てくれていた先生を“背信者”として敵視し、ある計画に踏み切ろうとする・・・という設定だが、宗教を妄信することの恐ろしさと、この時期の子どもがいかに無垢であり、社会や周りの大人から影響を受けやすいかが、言葉数は少なくも、とても分かりやすく描かれている。

そして、一度“信じたもの”に対しては、周りの人間たちの様々な働きかけがあっても、そう簡単に変わるものではない難しさをも直視することになる。

私自身は宗教そのものを否定するつもりは全くないが、何かに妄信的になり過ぎること、そして、大局的な視点を持たず冷静な自己判断ができない状態(年齢含む)でそれに傾倒し拡大解釈していくことの怖さが強く印象に残る作品だった。
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