のこ

僕の家族のすべてののこのネタバレレビュー・内容・結末

僕の家族のすべて(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ゲイである本作監督が、パートナーとの間に代理母出産で生まれた2人の子を連れて故郷である中国に帰省する様子を、彼の生い立ちや家族との関わりとも絡めて撮影された作品。

本作の監督であり主役のウー・ハオは10代まで抑圧され続け、自由に生きることを望んでアメリカへと飛び出した。だけど、時間をかけて己を理解し社会との折り合いを受け入れて、「自分らしさを隠すことが家族(祖父)のため」「自分が経験したものと同じ葛藤をさせたくない」「だって愛しているから」と彼の祖父へはカミングアウトをせずに子どもを連れて帰省する。
葛藤や苦しみにもがく時期を経て、それこそが理解できない者とされない者同士が共存するためのひとつの術なのだとこれまでの人生できっと学んできたのだろう。同じく性的少数者である自分も全く同じ学びを経て生きている。これは諦めではなく「優しさ」の選択だと言い聞かせて、いつか日本社会全体が変わるように願いながら。

中国社会の結婚や家庭、血縁へのこだわりとその繋がりの強さについては中国の番組で知っていたが、改めてSNS等を通じて世界を知る新たな子供達がうんざりするのもこりゃ頷ける。画面を通して観てるだけでも参りそうだもん。そして、日本も一部の中国ほどではないかもしれないが、結婚とか出産とか血縁とか異性愛とか家父長制とか母性神話やらへの固執はまだまだ根深いと実感する日々だ。(うちの父方の家系が割とそういうタイプ…)

多様性のある社会は巡り巡ってみんなの生きやすさに繋がる。
だから自分も常に価値観や知識をアップデートして生きていきたいけど、それでもいつかは「あの人はもう歳だから言ってもムダだよ」なんて言われるようになってしまうのだろうか。歳を取るほど難しいことだと分かっているけど、柔軟な大人でありたいな。
のこ

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