面白い。
**
ハオとエリックはゲイの中国人カップル。
彼らは代理出産で赤ちゃんを授かる。
ハオの姉や姉の夫は理解があるが、父や母には強い葛藤が生じる。
祖父に至っては恐ろしくてカミングアウトすることすらできない。
そこに従姉妹たちも加わって「普通じゃない」「理解できない」「聞いた日は眠れなかった」など、大混乱。
**
同性愛者など間違っている、不幸になるに決まってる。
ましてや子供を持つなんてさらに間違っている、不幸になるに決まってる。
心配だ。心配だ。
と彼らは繰り返す。
「心配だから」と言う大義名分(?)で、スラスラと長々と差別発言が連発されていく。。
**
100歳の祖父が孫に言った言葉
「お前がゲイだったことは私の夢には大きな打撃だった」
しかもこの祖父は笑顔で言う。
この孫がインタビュアーとなってカメラを構えてる前で、
笑顔でお前は打撃だと言う。
「子供は純血がいい。男系がいい。」
「友達や知り合いにも隠しなさい」
ここで箇条書きするのも憚られるほどの差別発言のオンパレード。
不思議なことに彼らは笑顔で言う。
**
「僕の家族の愛情表現は〝心配すること〟。
心配だから支配する。
僕はそこから逃げたかった。」by ハオ。
わかるわぁ、、、
僕も母からの心配という名の支配から逃げたかったもん。
逃げたけどね。
でもいくら距離的に逃げても心配が終わるまで、精神的には「心配=支配」は続きました。
**
「僕が親から得られなかった無条件のサポートを子供に授けたい。
〝同性愛者じゃなければ〟受けられたはずの親からのサポートを。」by ハオ
ハオとエリックはとても柔和で知的な感じの男性。
この激しい家族の中でよくこんな風に育ったなぁと思うほど。
それだけ苦しかったのでしょう。
ハオは落ち着いているけどずっと怒ってる。
なぜ自分は否定されなければならないのか。
この人たちは自分の息子よりも一体何を大切にしているのか。
**
今までは「カミングアウトする苦悩」が描かれてきたけど、
近年は「カミングアウトされる側の苦悩」を描く映像作品をよく見かけるようになってきました。
物語がそちら側に移行していってる。
これは良いことだと思う。
される側も大変だとは思うもん。
サポートがあって然るべきだと思う。
(ありますので。調べてね。)
**
男系最高!
内孫最高!
という呪縛に取り憑かれてるといかに差別発言がスラスラ出てくるか、
その様子が面白かった。
自分の子供や可愛い可愛い孫にでさえ、スラスラと呪いの言葉が言えてしまう。
ホラーかオカルトのようだった。
ものすごく強烈なドキュメンタリーでした。
ハッキリとした答えを出さずに、混濁したまま置いておかれるラストも素晴らしい。