Yoshishun

星屑の町のYoshishunのレビュー・感想・評価

星屑の町(2020年製作の映画)
3.3
のんが実写映画に帰って来た!
『海月姫』以来6年ぶりの主演映画は、売れないコーラスグループと田舎の少女との群像劇を描いた昔懐かしいテイストの人情ドラマ。

まず、メジャー作品への出演が事務所独立の関係でめっきり減ってしまったのんですが、映画秘宝での映画ヒロインコスプレ企画に出たり、音楽活動で細やかながらも活躍していたり、そして何といっても『この世界の片隅に』のすずさん!、とそれなりに活躍の場を広げてきました。そんな紆余曲折を経ての久々の主演作は、彼女の魅力が爆発しているといっても過言ではない作品だったと思います。

まず、『あまちゃん』やすずさんを彷彿とさせる方言女子の演技はやはり上手い。本当に田舎にいそうなキャラクターで、都会でのスターを夢見る女子というよくある設定でありながら彼女の自然体な演技により全く違和感がない。そして何といってもお茶の間から消えかかっていた期間に鍛えたであろう歌唱力も本作では遺憾なく発揮されていた。こんなにも昭和歌謡にマッチする歌声を持つ若手女優もそうそういないのではないだろうか。『あまちゃん』から7年経った2020年でも変わらぬ素朴さと古風な魅力を感じさせる女優でした。

そんなのんの魅力爆発の本作、じゃあ映画としても面白い作品だったかといわれると、正直惜しいところ。

まず、メインとなるハローナイツの東北での歌謡ショーだが、実際のショーの場面に行き着くまでの下りがかなり長い。言ってしまえば、悪い意味で舞台のようなのである。楽屋兼教室で、のん演じる隈部愛を巡るいざこざ、そこから始まる即席オーディション、各メンバーの葛藤と苛立ち、愛の祖父など、ありとあらゆるサイドストーリーが、この楽屋という何の変哲もない場所で約1時間も繰り広げられるのだ。更にはハローナイツのメンバーで主張も二転三転するため、1つの舞台で本作の主軸以外の部分でストーリーが展開されていく。それも映画という尺に収める為か、割と急ぎ足気味である。

また、ハローナイツの歌謡ショー終了後、愛が加入してからの快進撃もかなり急ぎ足気味。歌唱場面が変遷していく一連のショットは見応えはあるものの、ここも尺の都合で突拍子に人気になっていくことに違和感を隠せない。そして、ラストの愛の決断は伏線とはいえない呆気に取られるものになっている。いや、若者らしい決断なのだろうけど、それまでのハローナイツとの絆、スターとしての夢を蔑ろにしかねないものであった。

先述の通り、のんの本作での存在感は凄まじいものではあるし、肝心のハローナイツの各メンバーもそれぞれのバックストーリーに興味を持てる程には魅力があった。それぞれの歌唱シーンは、「シャボン玉」のMVも含め、レトロな雰囲気を味わえる仕上がりだったとは思う。ただあくまで舞台の映画化だけあって、所々舞台らしさが抜けきれておらず、終盤にかけては特に急ぎ足気味になっていた。キャスト陣がハマってただけに非常に惜しい作品でした。
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