「ヘンリー八世」の後、引退して故郷に帰ってからのシェイクスピアの晩年を、ケネス・ブラナー監督・主演で描いた作品。
多くの著作の中で人間の内面を描き心理描写に長けたイギリス最高の作家であるシェイクスピアが、実は自分の家族のことは何もわからずにいた。
共に暮らすようになって、溢れ出すように出てくる妻や娘の思いに戸惑いながらも、ついに家族と向き合い、辛い過去を乗り越えていく。
シェイクスピア俳優でもあるケネス・ブラナー自身が監督・主演を務めているが、特殊メイクでシェイクスピアの肖像画に寄せた顔は言われなければケネス・ブラナーとはわからないほど。
また、映像がとても美しい。庭に咲き誇る花々や木々の緑。夜はロウソクの明かりだけが、暗がりの中の顔だけを照らす。よく俳優出身の監督さんは絵に凝るが、ケネス・ブラナーも然り。どこを切ってもため息が出るほど美しい。
また作品内では様々なシェイクスピア作品の中からの引用が台詞の中で語られる。
特に、サウサンプトン伯と別れるシーンではシェイクスピアとサウサンプトン伯のならぬ恋心を暗に示すように「ソネット29」が引用され興味深い。
そのサウサンプトン伯を演じるのがイアン・マッケラン。シェイクスピアの妻を演じるのがジュディ・デンチとイギリスの名優勢揃いで見ていてたいへん楽しい。
シェイクスピア作品に詳しい方が楽しめることは確かだが、14世紀のイギリスの家族の物語として誰でも楽しめる作品でもある。