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ANIARA アニアーラのkawaebi99のレビュー・感想・評価

ANIARA アニアーラ(2018年製作の映画)
3.3
将来 絶対に起こりえそうな恐ろしい宇宙事故 人間の生きる支えとは何かを沈黙の中に問うた物静かなSF映画

登場人物にイケメン俳優や美人女優さんなどが一切出て来ず 庶民層の顔の役者さんばかりなのも この映画の焦点をボヤかす役割を担っていて良い
冒頭の軌道エレベーターは 自分が生きている間には絶対に実用化されないから ありえそうな映像で見せてくれて感謝感激 カッコいい

物語の途中、人類が地球の重力から解放されるための方法の話が出てきた 「散々 汚しておいた地球から逃れてその後はどうする? お前ら 重力を振り切って よそで生きていけるのか?」と我慢強い地球も嘆いていたと思う その罰を彼ら全員は受けてしまった

小説を読んでいるような印象を受けたので調べてみたら やっぱり原作があり
・スウェーデンの詩人・小説家ハリー・マーティンソン(1904~1978)
・1956年に出版した作品
とのことだった 通りでよく出来ているわけだ〜
良質のSFはSFを感じさせないドラマがあって素晴らしい

何故だろうか映画の映像を観ていて近年、地球の近くを通過した オウムアムア のことを思い出した あれがかつての宇宙船の成れの果てでないことを祈るばかりだ。




ストーリー
















放射能汚染による崩壊寸前の地球を離れて 火星に安住を求め旅立った8,000人の人類 彼らを乗せた方舟は不慮の故障により軌道制御を失い 回復の見込みもないまま暗い宇宙を漂っていく
唯一人々の心を治療してくれていた人工知能MIMAは人々を治療する度に蓄積して来た負の領域の分析処理に耐えられず自らを破壊してしまう
(この時代に書かれた小説では AIが人類を恐怖に陥れる ではなくもっとカウンセラードクター的な扱い方をされており 人類の心のケアに対して適切な治療方法が見つけられずバグって壊れてしまう)
ヒーリング効果の機能を失った宇宙船の密閉環境の中で次第に人々の心は変わり始める 悲劇の連鎖は続き 生活のレベルも下がる 必然的にモラルも崩壊し 人が人を救えなくなった時に 人々は新興宗教に傾倒し神の力にすがっていく

何の希望も見出せないまま宇宙船は人類未到の宇宙領域に達し人々は無表情のままそれを記念して祝う... くらいのことしかもう船内ではイベントは起きないのだった
そこから更に長い年月を掛けて巨大な棺は ベガが神々しく輝くこと座付近の地球によく似た惑星に到達する
もう地球上の生き物が全て死滅したずっと先の未来に

ブラッドベリみたいで儚く美しい終わり方だった。
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