Kawaguchi

エターナルズのKawaguchiのレビュー・感想・評価

エターナルズ(2021年製作の映画)
4.1
監督クロエ・ジャオは、
長編2作目『ザ ライダー』で、頭を砕かれ人生そのものであった「馬に乗ること(ロデオ)」を、諦める選択をします。3作目、オスカーを取った『ノマドランド』は、サブプライムローンの崩壊によって、街そのものが無くなり、人生全て注ぎ込んだ家と長年連れ添った夫を失くしました。そして今回の『エターナルズ』では、エターナルズの存在理由だった「使命」そのものが奪われてしまいます。

一貫して、クロエ・ジャオ作品では、「アイデンティティの喪失」が共通のテーマです。人生そのものであった「アイデンティティ」が失われた時に人はどのような選択をするのか、どのように絶望や敗北を受け入れていくのか、、、。

これは我々の『老い』ととも捉えることができますね。若いころは、活力があり、生きていくことに前向きですが、年を取り、視力・聴力が失われていき、果ては、友達やパートナーをひとりずつ失っていきます。いわば、我々を形作ってきたものが失われていくわけです。その時に私たちは受け入れることが、できるのでしょうか。

その点、本作、イカロスがとても魅力的なキャラクターになっていて、素晴らしいかった。何度もイカロスに泣かされました。マーベルが続けてきた、「神々の人間化」とクロエ監督の上記のテーマがシンクロした結晶の様だなと感じました。

あと、ポップカルチャーの最前線を挿入歌として使っているの、抜け目ないよね。
BTS「friends」は、「喧嘩しても、いつか歓声が止む時があっても、一緒にいて欲しい」という歌詞だし、セルシのスマホの着信音だった、リゾ「Juice」は、ジュースを魅力やパワーやエネルギーの意味で使い、自己肯定を高める内容になってます。いくつもの細かな演出によって、キャラクターに深みと立体感がでたなと。さすがだなあと。
Kawaguchi

Kawaguchi