ずどこんちょ

エターナルズのずどこんちょのレビュー・感想・評価

エターナルズ(2021年製作の映画)
3.4
氷河が溶けるのは地球温暖化ではなく、"出現"が近付いていたからなのか!
……とまぁ、地球の歴史は我々人類の人智を超えた絶大な力によって導かれていたのです。

およそ7000年前から知的生命体を捕食している怪物・ディヴィアンツから人類を守るため、宇宙の彼方からやってきたエターナルズたち。
物質変換する者、空を飛ぶ者、武器を作り出す者、高速移動をする者、発明をする者…と、彼らは宇宙エネルギーを駆使したそれぞれの特殊能力でディヴィアンツを駆逐してきたのです。やがて彼らの活躍は人間の中で語られるようになります。
イカロスの翼のように、我々の世界に残されている神話や神様の伝説の多くは、彼らが発祥なんだとか。エンディングで、世界各国の神や仏を描いた絵や彫像が映されますが、そこにエターナルズを象ったと思わせる演出を付けるのは想像力を広げてくれてワクワクしました。

およそ5世紀前にディヴィアンツを絶滅させたエターナルズたちは、人間社会に溶け込んで彼らを派遣したオリンポス星からの帰還通信を待っていました。ところが、ロンドンに新たなディヴィアンツが現れ、さらに彼らのリーダーだったエイジャックが死んだことが判明します。
やがてエイジャックの後を継いでリーダーに選ばれた主人公のセルシは、エターナルズの本当の目的を知るのです。
そこには、宇宙の創造主にもあたる巨大な力が働いていました。太陽さえ生み出す創造主はエターナルズと地球をある目的のために利用していたのです。

つまり、本作は神様の物語です。
私たちの住む世界。その次元を遥かに超えた創造主と、創造主が生み出した神々との戦いなのです。
人間なんてちっぽけなもんで。「アベンジャーズ」でアイアンマンやキャプテン・アメリカらがサノスと死闘を繰り広げていた時も、彼らは人間の戦争には介入しないという決まりを守って静観していたのです。人類を守るヒーローなどというレベルの戦いではありません。
この壮大なスケールにどこまで入り込めるかといった点が、評価を分けるかもしれません。

それと同時に、エターナルズたちは人間の世界に溶け込んで暮らすうちに彼らのことを「知る」ようになり始めます。使命に従って守っていた存在から、守る価値を見つけ始めるのです。
神の視点から見た、人間とは何か。醜く憎しみあって争い合うのも、愛し合って笑顔を向けるのも同じ人間です。
人類の歴史を辿るうち、戦争や原爆を見て人類に絶望する神もいました。それでもその後、同じ人間の中に愛や平和も共存することを知るのです。
知性があるゆえに、不思議な生き物です。人間とは。

神々は人間を守る意味を考える危機に直面します。もしも他の惑星と同じように人間を犠牲にする運命を辿らせるなら、宇宙規模で見れば数倍の新たな生命の誕生を導くことができます。生命の誕生や宇宙の運命を阻止してまでも人間を守る価値があるのか。
セルシのように人間の価値を知る者と、それに反対する者で意見が対立します。
私たちは神々に認められる存在なのでしょうか。

神々の物語はヒーローアクションというよりも神話の創造に近くて、芸術的で神秘的な闘いの物語とも思えます。最後にあれが"出現"した時も、巨大な脅威がエヴァンゲリオンの使徒を思い起こしました。
一連の闘いが終わった後、海辺に差す夕日も美しい限り。クロエ・ジャオ監督の自然美を感じられます。

一人だけ子供の姿にされたスプライトの恋模様も切ないですし、人間になることを望んだ物語も神話にありそうです。