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エターナルズのカポERRORのレビュー・感想・評価

エターナルズ(2021年製作の映画)
3.8
レビュアーの賛否の振れ幅が凄まじく、先日レビューした『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』以上に食指が伸びなかった本作。
たまたま今日、知人から只でDVDを借りられたので、遅ればせながらの鑑賞。
いや、想像を遥かに超えて良かった。
とにかく、クロエ・ジャオの作家性の高さに脱帽だ。
ノマドの時以上に、彼女の意志や目的がひしひしと伝わってきた。
「ヒーローとして華がない」とか、「LGBTぶち込み過ぎ」とか、MCUファン層からは色々言われている本作。
表現は悪いが、そうした雑音すら忘れ去られた今更ながらのこのタイミングで本作を鑑賞出来たのは、私にとって非常に幸運だった。
確かに、MCUフェーズ4を担う作品として見たならば、本作は異端この上ない。
だが、未見の方は、そうした背景を一旦忘れて、本作をクロエ・ジャオの描く”ヒトでない者たちの壮大なヒューマンドラマ”だと思って観て頂きたい。
もしも貴方が映画監督として、”この地球に住まう全ての人々の喜びや悲しみや怒りや苦しみといった感情、愛し合う様や傷つけ合う様、強さや弱さ、希望や絶望…そんな人間のありのままを156分の映画に詰め込んで成立させる”としたら、一体どんな作品を創造するだろうか。
私は、本作がひとつの最適解ではないかと考える。
エターナルズの存在は、無敵のヒーローとしてでははなく、この宇宙の創造主の業によって生み出された儚い駒として描かれている。
そんな彼らの苦悩や葛藤は、皮肉にも人間以上に人間くさい。
「ヒーローとして華がない」「LGBT満載」…クロエ・ジャオが描きたかったものが”儚いこの世界の全ての人間の有り様”に他ならないのだから、それは至極当然である。
気付けばその所業や営みは、全人類のそれの縮図のように目の前に展開される。
同志に裏切られ死ぬ直前に、かつてリーダーだったエイジャックはこう語る。
「皆と別れたあと私は世界中旅して人類と
 過ごしたの。
 彼らは争い、嘘をつき、殺し合う。
 でもそれだけじゃない。
 笑うし、愛するし、創造したり夢見る
 こともできる。
 この星とここに住む人たちが、私を
 変えた。」
まさに本作でクロエ・ジャオが描くエターナルズの姿そのものではないか。
そして、私はこの台詞で不覚にも感極まってしまった。
私のように取るに足らない不肖な生き物の営みに対し「それこそ人間なのだ。素晴らしいじゃないか。胸を張れ。」と励まされた気がしたのだ。
そう、本作『エターナルズ』はクロエ・ジャオが贈る、”無知で愚かで同じ過ちを数千年もの間懲りずに何度も繰り返しながら、それでも希望を捨てずに這いつくばって必死に健気に生き抜こうとする我々人類への人間賛歌”なのだ。
そんなクロエ・ジャオのメッセージが、私の心にはユニマインドで繋がったかの如くしっかりと届いた。
彼女のクリエーターとしての高いスキルと、MCU作品でそれをやってのけた強い意志に、心からの敬意を表したい。
そんなヒーロー作品があっても良いではないか。

少しでも興味を持った方は是非御鑑賞あれ。
『エターナルズ』は現在Disney+にて配信中。
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