ギヨーム・ブラック監督さんの「みんなのヴァカンス」があまりにも良かったから、同監督の映画祭をやってくれたいつものミニシアターへ。
やっぱりお客さん入っているなって感じ。
私みたいに「みんなのヴァカンス」が良かったから、観にきている人らもいるんかな。
あと数作品上映していたけど、時間の都合で全作観られなかったのは心残り。
またいつかやってくれないかなと期待して待っていよう。
さて本作は、リタイアした自転車愛好家たちを追ったドキュメンタリー。
スイスとフランスを跨る720キロにもなるルートがあるらしく、その壮絶なコースを走る、走る、走る。
その姿を淡々と追っていきつつ、インタビューを交えていくといった感じ。
それだけ。
それだけの内容なのんだけど、巨大すぎる自然を相手に、小さな小さな人間たちは自転車という非自動的な手段で、己の力で、さらに言えば限界を超えようとしてまで、走っていく。
本作にあたり、面白い監督さんのインタビューを見かけたので、少し引用抜粋しつつ私の所感を書いていきます。
自転車愛好家たちを捉えている作品ではあるが、なぜ本作はリタイアした年配の方たちばかりを追っているのかが気になっており、それに対する監督さんの回答がこちら。
「実際にはツアーには若い人も参加しています。ただ彼らには私は惹かれませんでした。中には自転車が好きな人もいましたけど、若い人の大半が、ただ単に運動が好きだからとかいう理由で参加しています。」
なるほど。
それは当然といえば当然か。
私自身、ジムに最近通い始めたのですが、その理由は「太ったから」と「登山のため」。
つまりは運動と健康のため。
さあ次へいきます。
「若い人らにとってこのルートというのは、そんなに難しいルートではないんですね。でも年配の方は、メタフィジックな面があるというか、彼らはできるだけ自分たちの限界を先へ先へと遅らせようとしてるんですね。」
これにはなるほど!となりました。
確かにそれを感じていたのです。
よくジムでも登山でも年配の方を見かけるけど、これには唸らされました。
健康のためにってのはあるのかもしれないけど、根底にあるのはこうした気持ちなのかもしれませんね。
さらに続きます。
「みな年を取っているわけですから、いつかは動けなくなって、家の中でソファに座っているしかない状況に陥ってしまうかもしれません。そのときを先へ先へ延ばそうとしている人たちに惹かれました。」
端的に言えば「老いに抗う」ということになるのかもしれないけど、それってこれまで知っている自分が自分でなくなるということだと思うし、それに抗い「まだまだ自分できるぜ!」ってものすごく自分を知るうえで重要なことだと思う。
敢えて、きつい試練を自らに課し、それに挑戦しようとする心意気だけでもなかなかできることではないと思うけど、本作に出てくる人たちは、それを楽しみつつ時には諦めながらも、これからの人生を生きようとしている。
元来、人間は孤独であると思っているのですが、大自然の中ではそれが露骨に出る。
今って良い意味でも悪い意味でも、人との距離感が近いと感じてしまうときがあるからこそ、たまに1人で登山に行くことがある。
険しい山行をしていると、自分の足音や呼吸音や血の動きすら感じることができる。
そんなとき、自分は生きているのだと実感することができる。
そんな風に感じながら、本作を観ておりましたとさ。