静かな鳥

勇者たちの休息の静かな鳥のレビュー・感想・評価

勇者たちの休息(2016年製作の映画)
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自転車って不思議な乗り物だよな、と観ながら考えていた。ハンドルを握り、足でペダルを踏み込むと、風を頰に感じながら自転車は前へ前へと進んでいく。まるで自分の身体と自転車が一体化しているような、そういう奇妙な感覚を覚えつつ。そういや最近、自転車乗ってないや。

『7月の物語』と併映されたギヨーム・ブラック監督によるドキュメンタリー。アルプス横断をする老年の自転車愛好家たちにフォーカスが当てられている。灰色の岩肌が一面を覆うなか、一人の男がゆっくり自転車で進みゆく後ろ姿を一定の距離を保ちながら捉えたファーストショットで、もう惹き込まれた。人類の起源、そこから今に至るまでの"旅"の道程、生きることと旅という行為、日常からの解放(逃避)──。インサートされる彼らの胸の内。何故彼らは黙々と自転車を走らせるのか。険しい山岳に挑むのか。
趣味に打ち込むということ。地中海での海水浴にて露わになる肌のくっきりとした日焼けの分かれ目からも、並々ならぬサイクリング熱が窺える。彼らは、とても活き活きとして見えた。幾つになっても熱中できるものがあるのは素敵。他にも、なんかおじいさんたちが結構色々と人生観を真面目に話していた気はするが、とあるシーンで画面後方に映る"パラソルおじさん"が全てをかっさらっていった。何なんだよあの人…笑。
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