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エコー・イン・ザ・キャニオンのmumbleboyのレビュー・感想・評価

3.6
朝の仕事前とかちょっとした時間に動画サイトとかで短い動画を見たりするのですがこの日は特に見たいと思える動画がなかったのでU-NEXTを覗いてみたら以前からマイリストに入れてた今作があるじゃん、と思い観はじめました。ここで全部観る時間はないし本来映画をこんな雑な見方をするのは好ましくないですが今作は何となく気にはなってたけどあまり好きになれないかもとも思っていました。その理由というのがここの出演者リストでも一番に名前が載っているトム・ペティがそんなに好きではないというのがあって何か明確な理由がある訳ではないですが何となく昔から好きじゃなかったアーティストなのでその人が大きくフィーチャーされてたら好きになれないなだろう、と思ってました。なのであまり本腰を入れて観るという気になれてなかったので何ならちょっとだけ観て好きじゃなかったらやめればいいかなくらいな軽い気持ちで観ました。一番頭でトム・ペティは確かに出てきましたがその後は特に突出した出方はしてませんでしたし仕事前の10分前後の時間分観ただけで結構面白いと思いその日、仕事の後に残りを全部観ました。

あまり乗り気じゃない理由は書きましたが観たかった方の理由と言うとこのジャケットに使われているリッケンバッカーというギターがとても好きだということがありました。自分は全然ギター下手なのですが10代に自分もバンドやりたいと思って大好きだったThe JamというバンドのPaul Wellerが使用していたこのリッケンバッカーというギターをバイトして買って弾いてた時期がありました。今だととても手に入る様なギターではないと思いますが当時中古で400ドルちょいくらいで買えてしまったんですね。今思うとちょっと信じられませんが自分が所有していた中でも最も素敵な逸品だったのではと思っています。その後自分の才能のなさに幻滅して手放しましたけど今思えばただ愛でるためだけでもいいからキープしておけば良かった、と。それだけ何というか見た目が圧倒的にオリジナルで格好いいギターなんですね。このジャケットに使われてるギターは12弦なので自分が弾いていたのは普通の6弦ですがこの12弦のリッケンバッカーの音というのが非常にユニークで今作にも出ているThe Byrdsというバンドがこのギターをフルに活用してそれこそウェストコースト・ロックと言われるサウンドを作ったとも言われています。これがどんな音なのか気になる方は動画サイトでThe Byrdsの「8 Miles High」という曲を聴いてみてください。これは録音バージョンとライブバージョンとあってライブの方はちょっとポップやロックを逸脱してプログレとかフリージャズの領域に入ってるんじゃないかって感じです。これが1970年ですが彼らが1965年にエド・サリバン・ショーで「Mr. Tambourine Man」を弾いた動画も良ければ見てください。ルックスもサウンドもあまりの違いにびっくりします。5年間の間に何があったんだって思います。リッケンバッカーの音でいうと6弦の方だとThe Whoの「Anyway Anyhow Anywhere」っていう曲の動画もあります。こちらも1965年ですね。こちらはイギリスでモッズ時代ど真ん中のThe Whoです。ちなみにこの曲は「さらば青春の光」で主人公ジミーがTVでこの放送を見て大興奮するというシーンでも使われてます。

ほとんど作品内容と関係ないことをだらだらと書いてしまいましたが今作それほど期待せずに見たら予想外に面白かったです。全然知らなかったことを色々知れたし当時のミュージシャン同士の交流だったりかなりの大御所アーティストが出てきたりしてとても楽しめました。今作の中心的人物はジェイコブ・ディランだと思いますがちょっと残念だったのは超大御所の息子さんですが彼自身すごくいい人だなって感じは伝わってきましたが歌がそこまで魅力を感じられませんでした。この映画の盛り上がりするためのポイントというのが当時の名曲をジェイコブ・ディラン中心とした現役ミュージシャンがかライブでカバーする場面だと思うのですが、生で見てたらそこそこ良かっただろうと思いますが映像で見る分にはそこまでじゃないなって感じで当時Buffalo Springfieldとかがライブで観客を魅了してた様なミラクルは起きなかったのかなと思います。まあライブのパートはそこまでではなかったですが色々な話を色々な人から聞ける貴重な作品だと思いました。
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