ちーちゃん

狂血鬼ドラキュラのちーちゃんのレビュー・感想・評価

狂血鬼ドラキュラ(1974年製作の映画)
3.6
DVDのパッケージには原作に忠実な映像化と銘打ってありますが、全くそんなことありません。前半は確かに原作のエピソードをいくつかなぞってありますが、少なくとも後半は大きく違います。もしかしたら1974年当時はそうだったのかもしれませんが、1992年に出たコッポラ版の方が余程忠実で、かつ世界観をなるべく壊さない程度のアレンジが加わることによりむしろ原作以上の完成度を誇っています。ですので、「忠実な映像化」を期待してこの映画を見た私はかなりガッカリしました。

セワード、モリス、レンフィールド不在。ハーカーも序盤以降ほぼ出てきません。ゴダルミング卿も教授に付き従っているだけでほぼ空気。
(それが悪いと言っているわけではありません。例えば『魔人ドラキュラ』や、ハマー版1作目でも登場人物の整理が行われており、原作のポイントを抑えつつ再構成→ストーリーの単純化に成功しているのですから。)
いちばん最悪なのは、伯爵がビックリするくらいコミュ障&挙動不審&ただの人間にしか見えないです。ボソボソ何言ってるか分からないし(DVDの音質自体良くないから余計に)、怒り以外の感情の起伏がほとんど読み取れないので、見ていてとてもつまらない。登場シーンがいちいち人間臭い。変身も一切しない。怪「人」なら怪人なりにもっと怪しげな雰囲気をもっと出して欲しかったです。これでは程度の低いただの不法侵入者にすぎません。ハマー版のようなあからさまな怪「物」感はもうウケなくなり、新たな表現を模索していた時代の雰囲気を感じます。その点、この5年後に公開されたランジェラ版は上手いこと脱皮しているなというイメージ。

褒めたい点も勿論あります。伯爵がミーナに血を与える場面。多くの作品では手首からが多いですが、ここでは原作通り胸から飲ませています。個人的にいちばん好きなシーンなので、とてもテンションが上がりました。この演出だけでも見られて良かったです。

(リチャード・マシスンは小説書くと天才なのに、脚本の才能はいまひとつなのか…!?と思ったらこれを書いたのはどうやら同名の息子さんのようだ)
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