戦争映画の金字塔である。
戦争映画といえば、地獄の黙示録やブラックホークダウンのような、戦闘面での派手さや独自性が売りになりがちだが、本作のテーマはアメリカ軍の規律の歪さ(戦争によって一族が絶えることはないよう、国が保証するというもの)を扱ったデリケートな映画である。
トムが演じるジョンとその仲間たちは精鋭と呼んで差し支えない部隊だが、過酷なノルマンディー上陸作戦を終えた後に与えられた任務は、戦略的重要度の低い前線にいるライアン二等兵の保護。
件の軍規に対して不平を言うことは許されないのだが、ジョンたちは内心、最悪の心持ちである。
そして、そんな中で接触するマット演じるライアンは、青臭く実直で熱い男。しかし、嫌々彼の保護を行うジョン達はその態度すら鼻につく。
この関係性を映像化するために撮影の際には、撮影スケジュールがハードなトム達と、ゆったりとVIPのように優雅なスケジュールを組まれたマットで、本当の軋轢を生み出していたらしい。
このピリピリした雰囲気は、この映画を語る上で外せないだろう。
間違いなく大作だが、かなりショッキングな映像が流れるため、ゴア表現に抵抗がある人は観ない方がいいだろう。
ちなみにタイトルのプライベートライアンとは、ライアン二等兵を表すのと同時に、個人的な問題というダブルミーニングであるそうな。