アラカン

プライベート・ライアンのアラカンのレビュー・感想・評価

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
4.5
戦争は劇ではなくただただ現実の結果なんだなと強く認識した。
悲劇を感じる間も与えられず語り合った戦友たちが無作為に淡々と死んでいく様は時間も運命も感じられず、悲痛が追いつく頃には耐え難い過程しか残っていない。戦争が終結するその時まで、それよりもまだ先の戦場に終報が届く瞬間まで、延々とその現実は積み重なっていく。
「1人の死は悲劇だが、100万人の死は統計上の数字に過ぎない」というアイヒマンの言葉は共感こそしないが理解は出来る。単位が人でなければ同じような情緒は常日頃から触れているからだ。しかしその100万人の分子が散る様が眼前に映る経験は悲劇なんて言葉じゃ温すぎるだろう。その痛みの100分の1でも表せる言葉を実際に経験していない自分の語彙からは到底見つけられないが、ただ月並みなことを言うならばこんな戦争を人類は二度と繰り返してはならない。しかし現実世界ではそんな繊細さを人情にではなく政治や経済に回しているため、これほどの規模ではないにせよ結局戦争が未だ日常に残っているが、いつか現代に生きるあのドイツ兵や広報部隊たちが共に芯からタバコと酒を楽しめるような平和な世界が実現してくれたらと思う。


演技も演出も全て良かった。
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