GT

プライベート・ライアンのGTのネタバレレビュー・内容・結末

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

 巨匠、スティーブン・スピルバーグが描く「戦争」。兄を戦争で全員亡くしたライアン二等兵の救出に向かう、ミラー大尉の兵士たちを描く。
 前半、そして後半の戦闘シーンがとにかく凄まじく、「金かかってんなー」と思った次第。マシンガンは景気良くぶっ放され、ドイツ軍もアメリカ軍も血を勢いよく噴き出しながら死んでいく。頭や腕が吹っ飛び、内臓が体の中から飛び出す。大砲が人間を吹き飛ばし、戦車が全てを粉々にしていく。
 対してストーリーは、どうにも良いとは思えなかった。一番の問題点というか疑問点は、「兄弟を全て失ったからその弟は本国に送り返す」という点だ。そのくらいの悲劇は戦場では日常茶飯事だろうし、ライアン二等兵だけがそんな温情をかけられる意味が分からない。もし実際にそんな命令があったら、現場は怒り狂うのではないか。しかも見ず知らずの二等兵を探すためだけに大尉レベルの人間が駆り出されるというのも、かなり無茶な設定だと思う。実際作中でも、「なんでそんな奴を探さなきゃいけねえんだ」と文句タラタラだが、「命令だから」以外の答えは用意されていない。
 ミラー大尉と他の兵士たちは様々な危機を乗り越えて絆を深めていくのだが、その兵士たちは敵の凶弾に倒れて次々と死んでいく。だが、こうした仲間たちの死に対する扱いが淡白過ぎるという問題もある。最後の市街戦では今まで戦ってきた仲間の半分以上が命を落とすのだが、それに対する鎮魂は用意されていない。最後のシーンでライアン二等兵が偲んでいるのはミラー大尉に対してであり、その仲間たちに関しては特に思いを寄せていないように見える。ライアン二等兵の出番は後半であり、こちらとしてはあまり感情移入していない、むしろミラーの隊全体に同情をしているのであって、最後にライアンが感動風に締められてもコメントに困ってしまうというのが正直なところだ。
 とにかく「ライアン二等兵を助ける」という前提そのものに激しく引っかかってしまい、映画全体を楽しむことがなかなか難しかった。面白いシーンは、確かにたくさんあったような気がするのだが。
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