ゆず塩

プライベート・ライアンのゆず塩のネタバレレビュー・内容・結末

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

【感想】
『フェイブルマンズ』『シンドラーのリスト』と見て、スピルバーグの印象が結構変わりまして。『ジュラシックパーク』とか『ET』みたいな、娯楽映画の監督だとずっと思ってたがそんなことはなかった。

冒頭のノルマンディー上陸作戦の映像が1998年ってすごいな。どうやって撮影してるんだろう……臨場感が凄すぎ。スピルバーグ監督、個人の力じゃないとは思うが、それでもあの映像を作り出してしまうのがバケモノだと思いました。
おまけに、あの冒頭シーン20分近くあるわけで。思い切った尺の使い方だと思った。無くても問題ない気もするが、あのシーンがあるからこそ戦争の悲惨さが伝わる。あと、ライアン救出作戦のFUBAR(フーバー)っぷりも分かる。2時間49分はなかなか長いけど。

内容的には、戦争の悲惨さを感じる映画だったかな。冒頭のシーンは、命の呆気なさを感じられずにはいられなかった。本当に酷すぎる、という言葉じゃ足りない。誰かが突っ込むしかないんだけどさ、死んでくじゃん、人。
冒頭以降も戦闘の緊迫感とか、銃弾の殺傷力の凶悪さを感じられた。戦闘時の混乱ぶりとかもね。
仲間の凄腕スナイパーの兵士が戦車に殺される所は、その後ピンチになるってわかりやすくて、話の構成が面白かったな。

一方で、ちょっとした人間ドラマもしっかりあるんだよね。
ミラー(トム・ハンクス)が自分の過去を話すタイミングとか、「そこで話すのかー」ってちょっと思った。その告白で、人の心を動かせるのって「本当か!?」って疑問に少し思ったり。ミラーって仲間からは厳格な軍人に見えてたんだろうな。観客側では、隠れて泣いていたりするのを見てるから、人の心がある人に見えてるけど。

アパムがドイツ人を一人だけ殺したところ、殺されたのが誰なのか最初わからなかった。敵も味方も似たような服の人ばかりで、自分には見分けがつかない。ドイツ語のところ、字幕か吹き替えをつけて欲しい。

凄い作品だなーと思いつつ、物語はかなりシンプルでしたね。
アメリカ兵(?)がドイツ兵をおちょくって殺すシーンもあるし、アメリカが正義とは言わない見せ方もしててバランスをとってるなぁ、と。
というか、敵の一人の命を助けた後、普通に殺し合いをしてて、感情の持って行き所が難しく感じた。捕虜は殺しちゃダメだが、敵意があれば殺すって。ルールとしては滅茶苦茶だ。こんなこと、戦争なんてしてたら心を壊す。でも「やらなきゃやられる世界」。

どんな映画かまとめると……
『アパムという一般人に近い立ち位置の人物。彼が戦場に急に放り込まれるように、観客も戦場に放り込まれ、戦争を体験する』そんな映画でした。疲れている時に見るのはお勧めしない。
『シンドラーのリスト』に続いて、結構つらい映画。『シンドラーのリスト』はまだ救いがあるけど、『プライベート・ライアン』は救いがないとかそういうことじゃなく。不条理で終わった感覚があって虚しい。
ゆず塩

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