現れる小林

プライベート・ライアンの現れる小林のレビュー・感想・評価

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
4.0
戦争の描写をとにかく突き詰めている。
泣きべそをかき、なんでこんなことをしなきゃいけないんだと思いながら戦っている描写はやけにリアルだ(まあ本物を体験したことがないので何がリアルなのかは実際にはわからないのだが)。

ドイツ兵が米兵を刺しながら悲痛に満ちた表情で
"Es ist einfacher für dich, viel einfacher. Du wirst sehen, es ist gleich vorbei."
(もう抵抗するな、その方が君にとってずっと楽だ。すぐに終わるから)
と言っているところが非常に印象的だった。ドイツ語は字幕にも出ないため、観客にもわからない(もちろん米兵にも分かっていない)。
戦場で何を喋っているかわからない敵に追い詰められる怖さや、何を言っているか分からない敵とコミュニケーションを取らなければならない時の独特な緊張感が伝わってきた。

この映画が、戦闘描写をありありと、痛々しくリアルに描く現在の戦争映画のスタイルの元祖らしい。今でこそ戦争映画の中で人体が吹き飛んだり血に塗れる様子を直接的に映すのは珍しくないが、この映画はこの時代に見ても戦争の痛みの描写が群を抜いている。
リアルタイムでこの映画を新鮮さと共に受け取った人にとっては相当な衝撃だったのだろう。