円柱野郎

プライベート・ライアンの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

プライベート・ライアン(1998年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

冒頭の上陸戦が衝撃的。
手足が飛び臓物が溢れ出す画もショッキングだけれど、その場にいるかのような主観の映像で一気に引き込まれる。
終盤の市街戦も圧倒的なリアルさ。
スピルバーグの演出もあるが、カミンスキー撮影監督の色調の抑えたイメージが、戦場のくすんだイメージとモノクロ戦争映画の雰囲気を感じさせるのも良い。

ストーリーは「七人の侍」を思い起こす部分もあるけど、映画的なテンプレートとして効果的に使われているかな。
皆キャラが立っているし、それぞれに役割がある。
アパムは兵士として嫌われがちなキャラクターだとは思うけど、元々非戦闘任務の兵士の彼は、観客の代わりにその場に放り込まれた人物だからなあ。
動けなくもなるさ。
彼が最初で最後に撃った弾でドイツ兵を射殺するが、一度救った敵兵が戦線復帰して、逆に仲間を殺すという…戦場の理不尽な道理を見た後ではあるけれど、感情的な部分と投降兵に対する扱いとの部分で複雑な心境にもなってしまうね。

この映画には無名戦士というものはいない。(ドイツ兵の扱いは軽いが。)
もちろん背景でバタバタ倒れていく兵士はいるけれど、テーマとしてはみんな名前があり、人生がある。
ドッグタグで名前探しをする際の表現に最も出ている“死んだ兵士にはみんな名前がある”という事実をここで突きつけているのが大きい。
生き残ったジェームズ・ライアンはそれを背負って人生を全うしようとしている。
それは彼の責任でもあったろうけど、彼の話だけではなく、戦後に生きる全ての人は皆そういった兵士の上に立っているのだと感じさせるね。
フーバーな任務でも、それを全うして戦った兵士に対するリスペクト。
それがこの映画の魅力でもあるし、その上で戦争自体の虚しさを突きつける反戦映画でもある。
円柱野郎

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