Toineの感想文

ロシア52人虐殺犯/チカチーロのToineの感想文のレビュー・感想・評価

3.6
【共産主義国におけるシリアルキラー捜査】
DVD化もされていたようですが廃盤のためVHSを購入して鑑賞いたしました。

ソ連時代からペレストロイカ直後にかけて(分かっているだけで)52人の少年少女を殺害した有名なシリアルキラー、アンドレイ・チカチーロが逮捕されるまでの約10年間の捜査を描いたノンフィクションもの。

ロバート・カレンのノンフィクション小説「子どもたちは森に消えた」が原作です。

キャストの感情表現を極限まで削ったハードボイルドな作りになっておりました。

主演の捜査官ブラコフ氏が新人いびりを受けながらも頑張って犯人をプロファイリングしてるのに上司達が揃いも揃って
"ソ連に連続殺人犯はいない"
"資本主義国にしかない現象だ"
なんて言葉を浴びせて協力してくれないというパワハラ地獄で可哀想でした。

そんな上司達のせいで被害者が増え続けるという負のループ。最悪です。

しかしブラコフ氏の上司の1人フェチソフ大佐(ドナルド・サザーランドさん!)は味方でいてくれて陰ながら手を差し伸べてくれます。
2人のバディな関係に男同士の熱い友情を感じて素敵でした。

チカチーロ役のジェフリー・デマンさんの風貌が逮捕前の本人とそっくり過ぎてびっくりしました。
本当に似てた!

犯罪捜査映画としては物凄く秀逸な作品でしたが、肝心の自供してから処刑されるまでのチカチーロをまるで良心があり同情を誘うかのように描いていた部分は好きになれませんでした。

HBO(アメリカのケーブルTV)のクレジットがあったのでTV用にそのような脚本にしたのかも知れませんが、自分のコンプレックスを何の関係もない子供達にぶつけた身勝手な鬼畜に同情の余地はありません。

いっそのこと映画の中でも観ている人達から恨まれる悪人として描いて欲しかったです。
実際の裁判中も彼は開き直ってましたから。

余談ですが平山夢明さんの「異常快楽殺人」というノンフィクション本(の161ページ)にチカチーロの詳しい犯行がかなり詳細に掲載されているのでご興味のある方には大変おすすめでございます。