かず

ノー・ストーン・アンターンドのかずのレビュー・感想・評価

4.5
本日で配信終了と知り、滑り込み観賞。
さすが、アレックス・ギブニー監督。
タイトルに由来するLeave No stone unturned(全ての石をひっくり返す)という言葉の通り、一つ一つ入念に事件の要素を洗い出す執念の記録だ。

94年サッカーワールドカップ。アイルランド対イタリアの試合をパブで観戦していた客6名が銃殺される。死者は全員カトリック。犯人2名は逃走。
乗り捨てられた車が発見され、容疑者が浮上したため、すぐに捜査され、逮捕・起訴されると思われた。

しかし、なぜか証拠や証言記録は破棄され、事件から10年以上経っても、遺族に何の進展も知らされない。


事件の背景は想像を絶する複雑さ。
1921年、アイルランド共和国のイギリスからの独立。1922年、大量の死者を出すカトリックとプロテスタントの内戦の勃発。それに対する警察の超法規的諜報活動。そして、北アイルランド領を有するイギリスと、アイルランド共和国の複雑な外交問題にまで発展する。

HBOドラマ『チェルノブイリ』の劇中のセリフを借りれば、"真実は、人の欲求や政府やイデオロギーや宗教に左右されない。ただ、発見される時を待っている。"

人名が記号で誤魔化された警察調書を分析し、報復を恐れ口を閉ざす事件関係者への入念なインタビューを通じて、事件の真相に迫る様がとてもスリリング。まさにジャーナリズム。

現実がフィクションを完全に凌駕してしまっている。
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