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アスリート~俺が彼に溺れた日々~のkazataのレビュー・感想・評価

1.5
新年一発目のレビューは、やたらと酷評されてる本作をチョイス……なぜって、そこは大傑作『ドライブ・マイ・カー』で濱口竜介監督と共にカンヌ映画祭で脚本賞に輝いた大江崇允監督作だから!
(てっきり本作の脚本も大江監督だと思ったら、まさかの脚本完成後に監督として参加決定という流れだったそうで…)

映画内での会話を一部引用……
「ここって…ゲイの(バー)?」「LGBTQって言ってよ!」……
(同じマンションの住人風の20代の女子二人が)「あの人ゲイらしいよ」「えー、気持ち悪い」……
そんな差別風景が唐突に何度か放り込まれてくるけど、どうやら本作で描かれているのは自分の知らない世界線みたいだ(苦笑)

性的マイノリティ支援団体や当事者がガッツリ関わっているっぽいから、おそらく実際に体験した差別・偏見・暴言ってことが盛り込まれているんだろうけど、あまりにも聞き飽きたテンプレ表現過ぎて……ごめんなさい、イチイチ笑っちゃいました。
(もし性的マイノリティへの差別や偏見をメインテーマとして描きたいなら、二人のラブストーリーの本筋部分を「同性愛関係ってことがバレたら即終了」ぐらいの状況にすべきかと…現状だとお互いの家族にバレたらどうしようぐらいのミニマムな話でしかないような…)

ってか、冒頭から"ランブルフィッシュ=闘魚"を説明したり、"色盲"設定までぶっ込んで「個人と個人は決して分かり合えない」とか言ってるんだから、別に「誰も彼もに分かってもらおう」となんてしなくてよくね?
(「例え分かり合えない部分がある者同士でも共存できる社会にしましょうね」があるべき理想では?)
("家族は愛や絆で結ばれている"的な盲目的で揺るぎない思想がある感じが透けて見えるのもイヤだ…)
(心情を理解し過ぎてくれる謎の元カレ映画プロデューサーまで出てきて…結構幸せな方じゃね?)

そんなこんなで、脚本的にも色々と煩いし、各キャストの学芸会演技も見ていて笑える上に、主役のコウヘイのキャラがまた終始「ただの自分勝手なヤリ目野郎」にしか思えず、「そりゃ男女関係なくお前から離れていくわ!」とツッコミ不可避。
(元競泳選手という件の必要性が謎なのと、「人生ってアスリートみたいなもの」みたいなまとめ方も理解不能過ぎる!)
(もしかして「恋に溺れる」って副題をつけたいがための水泳設定?ってか、あんなプールを横に使う水泳教室あんの?アスリートを肯定する流れってことは、冒頭に否定された水泳の熱血指導も復活?ってか、どう見ても水泳のレベル低過ぎるよ!)
(恋に溺れる相手の悠嵩の方も「ラベルづけは嫌だ」と言いながら「自分のセクシュアリティはゲイ」と自覚しているわけで…え、何?「ゲイだとかストレートだとか自覚するのはOKだけど、他人から言われるのがムカつく」って話?)

あとは、(低予算ゆえの苦しさは理解しつつも…)愛に包まれた夕焼け風景をロマンティックに描くこともできない(そもそも監督が遅れて現場にいなかったらしい…)海岸シーンを見て、「邦画の弱さを象徴する最低最悪なシーンだな…」と絶望!
(えっと…スケジュール厳しいなら都内の海辺で撮ればよくね?ってか、そもそも勝浦という設定自体が無意味じゃね?物理的な距離の問題じゃないんだから、駆けつける先は都内の病院でいいし、その病院の屋上で夕景ロケで済む話!)

もうツッコミを入れるのもしんどいってば……

コウヘイと悠嵩の間で"生まれるはずだった何か"(それは愛に近い感情、あるいは互いの感情同士の化学反応と言ってもいいかもしれない…)を描こうとするも大失敗した(それを成功に導くことができなかった監督のせいでもある…)おかげで、後の『ドライブ・マイ・カー』のあの"二人の間で何かが生まれた"名シーンが誕生したに違いない!……と結論づけて、本作を見た意義を無理やり捻出しました(笑)
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