ハヤシ

フリー・ガイのハヤシのネタバレレビュー・内容・結末

フリー・ガイ(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

とにかく題材と主題が強い。

自分の生きる世界が造り物のフェイクだと気付く『トゥルーマン・ショー』と、同じ毎日をループする中でどのような生き方が善なのかを模索する『恋はデジャブ』のエッセンスを持ちながら、現実×仮想世界の2軸で進む展開、オンラインゲーム特有のギミックとメタなユーモアが盛り込まれている。また、主人公「じゃない方」として定められた自らの立ち位置を努力によって変えて自信を付けていくプロセスについては、『LIFE!』の要素もあるなと感じる。
とにかく名作映画のエッセンスを踏襲しており、いわゆる「全部乗せ」(情報過多)に近いが、これが上手くまとまっている。

減点要素としては2つあり、1つはゲーム会社社長との盗作を巡る物語のシナリオ。正直、筋そのものは凡庸でつまらない。細部がご都合主義でマス向けのざっくりしたアメリカ映画のテイストを感じるが、ここは批判しても仕方ない点かも。
(ハリウッドが基本的にマーケットイン型で作品を投入していく以上、この起承転結のフォーマットから抜けるのは簡単じゃないし、そもそも「大きな物語」を描くなら必然的にこの類の綻びは発生するよね)。

もう1つは日本の描写。前時代的すぎる。渋谷を映しておきながら、無数の日本人役がどう見ても日本人然としていない東アジア系なのは勘弁してほしい。このような形で日本を登場させるのは、リスペクトでも媚びでもなく、驕りだからな。「神は細部に宿る」にも関わらずディテールがぐちゃぐちゃな以上、いくら題材が秀逸でも4.0を付けられない。

ただし、恋愛要素の結末とその伏線として、「神はご自分にかたどって人を創造された」(創世記)の如く、主人公ガイのパーソナリティにキーズの趣向が反映されていたところは良いですね。王道のようで絶妙なひねりが効いていて、素敵だと思った。
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