真一

フリー・ガイの真一のレビュー・感想・評価

フリー・ガイ(2021年製作の映画)
3.6
 「自分は所詮、この世界のモブキャラに過ぎない」ー。こんな思いに駆られて落ち込んでいませんか?もしそうであれば、本作品をお勧めします。オンラインゲームのモブキャラが自我に目覚めて大活躍する本作品は、人生はいつでもやり直せるという勇気と希望を、観る人に与えてくれるでしょう。

 ただ、暴走リスクが取り沙汰される「自我覚醒AI」を、万人に愛されるナイスガイ(モブキャラ)として描いたところに、AI礼賛論的な気持ち悪さも感じました。功罪半ばする映画です。

 舞台はオンラインゲーム「フリーシティ」のバーチャル世界。その片隅で暮らす青シャツの銀行員ブルーシャツガイは、ある女性を観た瞬間、これまで延々と同じ行動を繰り返すだけの自分の日々に満足できなくなる。そう、ゲームのモブキャラに過ぎなかったガイが、自我に目覚めてしまったのだ。

※以下、ネタバレ含みます。

 人が操作していないモブキャラの活躍に、ゲーマーたちは騒然。一方、フリーシティの製作会社「スナミ」の社長は、こんなバグにみんなの関心が向くと「フリーシティ」の続編が売れなくなると懸念し、ガイの討伐を部下に命じる。前代未聞の大バトルの行方はいかにーというのが、あらすじです。

 モブキャラのブルーシャツガイは、本当にナイスガイです。気立てはいいし、純朴だし、笑顔も素晴らしい。そしてガイは自我の目覚めとともに「この世界をよい方向に変えられるのは、ほかならぬ自分なんだ」との思いを抱きます。グッときました。誰もが感情移入できるキャラだと思います。

 でも、危険な「自我覚醒AI」をこれほどまでのナイスガイに描いていいのかという疑問は感じます。加えてガイが、善良な人間を救うツールとしての役割を果たしていたことも、引っ掛かりました。結局のところガイは、人間によって造られた「疑似人間」であり、道具に過ぎないのではないか。そうだとすれば、この作品はかなりのご都合主義ではないか。そんなモヤモヤが残りました。さまざまな評価が成り立つ作品です。 
真一

真一