うえびん

朝が来るのうえびんのレビュー・感想・評価

朝が来る(2020年製作の映画)
4.0
光が、全ての河瀬作品に通低している。「殯の森」に差し込む光。「あん」の桜の花越しの光、「光」の丘の上で二人を包む光。本作では図らずも主人公の名前が“ひかり”。都市、山村、海辺、どこにも変わらず降り注ぐ“光”の描写が印象的だった。

物語のテーマは、子どもをもつ、授かることの意味。佐都子とひかり、二人の女性の人生を通して浮かび上がらせる。妊娠、出産、育児、僕自身、夫として妻の体験に並走してきたが、想像が甘かった、浅かったなぁと実感させられた。作中の二人の母の置かれた状況が過酷であるからこそ、その体験は普遍性をもって、直接体験できない男性にも響くのだと思った。辻村深月さんの原作を読んでいたので、より味わいが深まったのかもしれない。

物語のラスト、ひかりを許した佐都子と佐都子に許されたひかり、二人の心中に光が灯るのを見た。辻村ワールドの主旋律を河瀬ワールドの通低音が際立たせる。原作と合わせての鑑賞がオススメ。
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