Ginny

朝が来るのGinnyのレビュー・感想・評価

朝が来る(2020年製作の映画)
4.0
辻村深月先生のファンです。
2008年に初めて『子どもたちは夜と遊ぶ』の講談社文庫版を手に取り出会い、それを読んで衝撃を受け、その後その時点で入手できる既刊をすべて揃え、卒論は辻村深月論を書きました。それ以降も単独名義の単行本は発売されれば購入し読んでいます。
辻村深月先生が紡ぐ文章が好きだからこそ、メディアミックスには今まで手を出したことがありませんでした。
ドラマを見てみようとしたことがありますが、本と違う、とすぐに見るのをやめてしまいました。
どうしたって辻村深月先生の文章を超えられるわけないと。

『朝が来る』は高名な河瀬直美監督作品なので、そんなおかしなことにならないだろうとは思ってましたが中々見る勇気が出ませんでした。
でも、2020年のアカデミー国際長編映画賞の日本代表作品に選ばれたのを聞いて、良いんだな〜と思いWOWOWを録画していました。それでも…まだ手を出すことが中々できず、今のメンタルなら受け入れられそう〜と思い見てみました。

本で読んだ、記憶に残っている大好きなあの文章について触れられなかった。
ナレーションにも、台詞にもなく。
だからこそ、その経緯があっての朝斗の名前の意味にも触れられることはなかった、台詞で。

でも、映像で語られていた。
それに、驚いた。

こんな映像表現で原作を粋に表現してもらえることがあるんだと感動した。

もしかしたら、本を読んでいない人はそれを拾えないかもしれない。
だから終わり方に消化不良を起こすかも知れない。何が言いたいの?なんて。
いや、雄弁に語られていたんです(泣)

あの自然の風景が差し込まれていたのは意味があって…。
でもその差し込み方も無粋ではなく。
わかりやすくそれ「だけ」やっていたら察しがついてしまって、明け透けになるところを登場人物の心理描写を自然の風景のシーンや音を盛り込むことで伝えて、混ぜながら、でも整理されていて効果的に伝わる中で、その中で、取り立てて意味があるのが…アレ…(涙)

光。

河瀬直美監督の作品を見るのは初めてなのですが、こんな素敵に表現してくれる人なんですね。
辻村深月先生の素敵な作品を、映画としての表現で表してくれて感謝と感動の気持ちで胸いっぱいです。
本と映画、それぞれが別の分野、それぞれにできることと自分の分野の自分の表現方法でやれることをわかって出してくれた、それに感心です。

また、キャスティングがとても良い。
永作博美さん、井浦新さんの演技がめちゃめちゃめちゃめちゃめちゃめちゃうまい。
浅田美代子さんのキャスティングがハマりすぎてて一時停止して興奮してしまった。ぴったりすぎる。
蒔田彩珠さんもとっても絵になる。憂いと画面に映るだけで場が保つ色気(セクシーとか女性性の意味ではなく漂う人の魅力として)が素敵。

全体を通してみなさん感情表現が過剰ではなく、わざとらしい演技には見えなくて自然に受け入れられるトーンで、とても良かったです。

内容は本の感想で書いてるので、映画表現のところに終始しました。

出すだけ出して放置の男とか無理解デリカシーなしの男とか、田舎特有のうざさとか不満や愚痴は尽きないけれどここには書きません。

こんなに素敵に実写化してもらえることあるなんて、とメディアミックスに希望を抱いてしまいそうです。
Ginny

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