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朝が来るのringoのレビュー・感想・評価

朝が来る(2020年製作の映画)
4.5
久々に傑作だと思った映画。

まず先に蒔田彩珠、すごすぎる。びっくり。ひかりの中学時代からどんどん変わっていく様がほんとに儚くて美しかった。どの演技もすごかったけど、親戚とのシーンは忘れられない。初めて感情が爆発したひかりの、顔も目も声も、演技とは思えない。

養子縁組。ある人にとっては希望であり、とても素敵な制度だと思う。生まれてきた子どもにとっても、希望であると思う。
朝斗がとても大切に育てられていて、“2人のお母ちゃん”の存在を受け止めて真っ直ぐに育っていたから、そう思う。

養子を受け入れる夫婦や、養子として血の繋がらない親に育てられる子どもに焦点が当たっている映画だとなぜか思い込んでいた。

でも言ってしまえば養子を受け入れる側は、子どもを育てるための金銭的、精神的な余裕がある暮らしを、愛する人とできているはず。授かれないことは辛いことかもしれないけど、子どもが欲しい、親になりたいと思える、そんな現状だけで既に幸せなのかもしれない。

一方で養子として子どもを引き渡す側は中々辛い事情を抱えている。望まない妊娠、身体を痛めて生んでも育てられない環境。好きな人から見捨てられ、学校にも行けず、家族とも上手くいかず、友達とも疎遠になる。働くにも良い仕事には就けない現実。

中学生の瑞々しく爽やかで美しかったひかり。純粋な恋をしていただけなのに、こんなにも人生が変わってしまう。

ひかりの周りに集まる女の子たちも印象的。みんな何かしら抱えてるけど、ひかりと同じで変わってしまう前の幸せだった頃の面影みたいなのがまだあって、何故だかみんな優しい目をしてるように思えた。女性って強くて優しいなと。

「あなたなんかに関わってほしくない」
という言葉が重くて悲しくて切なくて。

「なかったことにしないで」
という言葉が突き刺さって。

「ごめんなさい、わかってあげられなくて」
という言葉があたたかかった。

中学生のひかり、そして現在のひかり。
朝斗の澄んだ瞳に映る、ひかりの姿。

エンドロールに入った瞬間、どうか朝斗がひかりに微笑みかけてくれますようにと心から祈った。だからこそエンドロールの途中の演出には号泣してしまった。

感情が揺さぶられまくった。
薄暗かったところから、朝が来た気がした。
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