馮美梅

朝が来るの馮美梅のネタバレレビュー・内容・結末

朝が来る(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

子供の存在って一体何だろうね。
欲しいからと言って出来るものでもなく、いらないと思っていても出来てしまうこともある。

自分の周辺にもいろんな人がいたよ。
30年くらい前にある人は夫婦仲は良かったけど、子供が出来なくて、調べたら、その人が無精子症(その当時はまだ世間的に認知されてない)ということがわかって、結局離婚することになった。

またある人は結婚当初は子供がいなくても良いよね(当時DINKSってのも流行していたな)と言っていたみたいだけど、ある時、旦那さんの方が子供が欲しくなったみたいで、何度か不妊治療にトライしたけどどうもうまく行かず、奥さんは落ち込み、子供が出来なくてもいいじゃないみたいな感じだったのに、旦那さんの方がもう絶対子供いるみたいになって…結局その後どうなったのかはわからないんだけど…

本作の夫婦も旦那さんの方が無精子症ということだったけど、ふと旅先で観たテレビでの特別養子縁組の番組を観て、決意する。

物語はある赤ちゃんを特別養子縁組をする夫婦とこの夫婦に赤ちゃんを託す産みの母親の視線で進みます。

同じシーンでもそこに至るまでの経緯特に14歳で妊娠してしまった生みの母であるひかりの約6年くらいの人生は壮絶そのものでした。

ひかりから朝斗を育てる親となる佐都子と清和も子育てに奮闘する。
幼稚園で同じマンションに住むお友達が怪我をしたことで、お友達が朝斗に押されて落ちたと言われて、ママ友からもあれこれ言われ肩身のせまい思いをする。朝斗は「じぶんはやってない」という言葉を信じたいけれど、住民そして同じ幼稚園仲間の関係がぎくしゃくすることも生活していくうえで生きずらくなる。

多分それは、朝斗が自分の産んだ子供ではないことも話をしているということで周囲にいらぬ詮索をされるのも嫌だったのかもしれない。

そんな時に、突然「朝斗の本当の母親は私だ」と光がやって来たけれど、あまりの光の見た目の変化に佐都子も清和も信じることが出来なかった。

ひかりは手放したくなかっただろう。愛する巧の赤ちゃんを育てたかっただろう、しかし、まだ14才、周囲からしたら経済力もないし、赤ちゃんで彼女自身の人生を壊したくなかったはずなのに、結局親も親戚もそんな彼女の心を案じることが出来なかった。

手放したことで全てがなかったように生きていける人もいるだろう。ひかりが出会ったベビーバトンの女の子たちもそういう人は多かった。でもひかりは愛する人とできた命を手放したわけではないし、忘れることもなかったことも出来なかった。

あまりに純粋過ぎて辛い人生を送ることになってしまったけれど、それでもやはり彼女の子事は純粋だと思った。

驚いたのは光に借金の取り立てに来たのが青木崇高さんと若葉竜也さんだった。

ひかりは奈良から広島、そして朝斗がいるところへ流れつく。それも少しでも愛する我が子の体温を感じたかったのかもしれない。

佐都子がやってきた女性が本当にひかりだと知って、自分たちと別れてからのいきさつを聞いた時、自分たちが幸せに感じていた日々の中、彼女もきっと幸せに青春をおくる日々を送っていると疑わなかったのに、そうじゃない現実と彼女にとっても朝斗はかけがえのない母親なのだと思い知らされたんだと思う。

でも、最後ようやく再会できた親子、朝斗にとっては会いたかった広島のお母ちゃんに「会いたかった」って言ってもらえてひかりはどう感じただろう。

子供が欲しくても無理な夫婦は沢山いる。子供がいても暴力を振るったり、殺したりする親もいる。子供を育てることが無理だと思う人は、周囲の世間体に縛られることなく、手放してもいいと思う(自分の苛立ちのはけ口に暴力を振るったり、殺したり、育児放棄するくらいなら)そして、子供が欲しいと願う夫婦には、特別養子縁組がもっと受け入れやすくなるような法整備など出来たらいいのにと思う。

今の時代、LGBTなど同性カップルなどもいて、そういう人たちの同性婚などが容認できるようになれば、もっと特別養子制度などで幸せな家族の元に行く赤ちゃんが増えるんじゃないかと思ったりした。
馮美梅

馮美梅