恋しくて

カセットテープ・ダイアリーズの恋しくてのレビュー・感想・評価

-
ストーリーは王道の青春映画で、80年代に夢を追う若者と父との確執がメインテーマにはあるものの、ブルースに憧れる主人公がイギリスに暮らすパキスタン人というところがポイントの映画。書くこと、自分を表現することで生きることを実感する主人公。その純粋さには泣ける。そして映画の中にブルースが最後まで出てこないところも良かった。全世界にこうやって映画にもなっていない励まされて生きていた若者が80年代には沢山いて、この映画をブルースが見た感想を聞いてみたい。
映画内のテレビのインタビューで「この時代にヒーローがいるのなら俺の弟のような労働者こそがヒーローなんだ。」と語るブルースにはこの時代のカリスマ性があり、「これは俺の、私の為の歌なんだ」と音楽の素晴らしいさ以上に響くものがあったんだと思う。写真家のアラーキーも「戦後の日本を支えたのは政治家ではなく、一般人なんだ。そういう人間に誰もスポットライトを当てないなら俺が当てる。」と撮影された写真展を見たことがある。どの時代も大衆の心を掴める人がカリスマになる。
そう思うと70年代のブルースって日本の尾崎豊みたいな存在なんだろうな。
恋しくて

恋しくて