円柱野郎

女囚701号 さそりの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

女囚701号 さそり(1972年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ある刑事の出世道具としておとり捜査に利用され、恨みを抱いたまま女子刑務所に収監された女・松島ナミ。
ナミに対して他の囚人や看守たちから嫌がらせとリンチを受ける中、ある日、刑務所で暴動が発生する。

暴力と女の裸が入り乱れるアングラ感が今観てもなかなか鮮烈だけど、さらに輪をかけて主題歌「恨み節」の印象的な使い方と、半ば実験映画のような演出が印象に残る作品だった。
回想シーンで使われる舞台の様な割り切ったセットやガラス床の下からのカット、破瓜を印象付ける白いシーツに広がる赤い色のモンタージュ、クライマックスでシネスコに人物の全身を入れるためのカメラ横倒しのカットなど、結構自由自在に“映画”という表現を試しているようにも見えるのが面白い。
シャワー室でガラス片を片手にナミを追いかけまわす女囚のメイクには、さすがにちょっと失笑してしまったけど(苦笑)

逆境に耐えて耐えて、ラストに恨みを晴らすという展開は、ある種、時代劇的な展開であるとも思う。
終盤の暗殺の連続なんてまるで“仕事人”のそれの様でもあるし…って、この映画は「必殺仕事人」より前か。

とにかく、黒幕がいて、虐げられた主人公が最後にその恨みを晴らすというのは、日本人好みの展開だとは思うよね。
ある種の判官びいきというか、そういう感覚で主人公に肩入れしやすい。
でもそれ以上に透けて見える反体制的な感じというか、権力に対する反感というものをまるで隠そうとしていない作風が70年代初めの空気に合っていたのかなとも思う。
開幕、東映のロゴとともに流れる君が代と、次のカットで映される日の丸
ラストも掲示を刺したナイフが宙を舞い、日の丸の前を横切る。
これを意図的と言わずして何とするか。

主演のナミを演じた梶芽衣子は弱さを感じさせない演技が良いねえ。
絡みのシーンもちょくちょくあるけど、当時日活ではロマンポルノをやっていた時代だし、作品全体としても女囚の裸や半裸が多いのは東映にもそういう影響があったのかなあとも思ったり。
どうなんだろう。
まあ色んな意味で時代を感じる部分はあったけれど、今観ても十分印象に残るインパクトはあったね。
円柱野郎

円柱野郎