Ricola

女囚701号 さそりのRicolaのレビュー・感想・評価

女囚701号 さそり(1972年製作の映画)
3.6
「だまされるのは女の罪なんだ」
日本国旗が、血が白い布の真ん中にじんわりと広がっていく。
主人公ナミの復讐心と執着心ゆえの言動も、この血のように波及していく。

クールビューティーの代名詞とも言えよう梶芽衣子の魅力を、余すことなくどのように見せるかがこの作品の焦点であり、物語もそれらを中心に形成されているように感じた。


ナミは罵られてもニヤリと笑みを浮かべたり、どんなに激しい暴力を受けて痛そうな表情を見せても、すぐに軽蔑の眼差しを相手に向ける。揺るぎない復讐心がナミの胸に常にあるからだ。
鋭い眼差し、食いしばる口元。梶芽衣子の本来の芯の強さまで伝わってくるようである。

回想シーンの舞台のようなつくりが印象深い。ナミがなぜそこまでの復讐心に燃えているのかが、そこでは説明される。
無機質な異空間において、ナミが受けた屈辱が淡々と映し出される。
レイプされたうえに愛する人に裏切られ、床に寝転がったまま呆然とするナミ。
悲しみと屈辱から執念と怒りへと変わっていくのが、彼女の表情以外に演出にも表されている。
乱れた髪が真っ直ぐに整い、さらにその髪が頭上へと一直線上に集まり、真っ赤なライトがナミを照らすと同時に彼女の瞳孔も開くのだ。彼女の心のスイッチが押されたことが、きちんと可視化された表現が面白い。

復讐劇とは言えども、暗く深刻なシーンばかりではない。過激で残酷な描写が多いが、観ている者を暗闇に引きずることはないだろう。
もはやホラーを通り越して笑えるシーンがあったほどである。
それはガラスにぶつかり顔から血を流す女囚の一人が、半裸で走ってナミを追いかけるシーン。
青暗い照明のもとでまるで般若に化けたような顔をした女囚の暴走は、ホラーであるはずだが、漫画のキャラクターのように誇張された彼女の顔とカオスな状況に正直笑いが込み上げてきて仕方なかった。

警察や看守がナミにとっての敵の一部であるが、ナミを嫌う女囚たちのほうが明らかな悪役として描かれている。
数多くいる女囚のなかで一際ナミが、というか梶芽衣子が目立つのは確かだろう。

梶芽衣子のかっこよさと美しさを堪能する作品であるはずだが、ストーリーも陳腐ながら軽く楽しめるものだった。
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