柿トマト

Winnyの柿トマトのレビュー・感想・評価

Winny(2023年製作の映画)
3.0
キャスト陣が素晴らしい

「Winny」というタイトルは、2002年に金子勇氏が開発したファイル共有ソフトの名称。このソフトは、インターネット上で複数のパソコンをつなぎ、ファイルを共有する分散ファイルシステムの技術を使用している。Winnyは匿名性が高いため、映画、音楽、ゲームなどのデータが著作権を無視して流出し、さらには悪用するためのウイルスが流布。このような状況の中、金子氏は「著作権侵害幇助」という名目で逮捕され、弁護団と共に検察と争う姿が、この作品の主要なテーマとなっている。

この作品の魅力は、なんといってもキャスト陣が演じる役に完全に入り込んでいるところ。演技が自然に見えるというべきなのか、とにかく全員の演技に関しては素晴らしいと一言で表現できている。

見どころは、東出昌大が演じる金子勇氏の人物像の描写。東出昌大は、金子氏の内面を丁寧に表現することで、観客に彼の思考や感情を伝えることに成功している。金子氏が裁判にかけられているにもかかわらず、マイペースな発言をして、周りを驚かせたり、弁護団に対して「日本の未来のためなら、遠慮なく有罪にしてほしい」と意見を述べたりする場面では、彼の信念が見て取れる。さらに裁判の最終陳述でのシーンはホントに素晴らしい。観ているこちらもつられて感極まった場面だった。

また、金子氏を担当する壇俊光弁護士役の三浦貴大も素晴らしい演技を見せている。以前はもっとカッコいい、いわゆるイケメン俳優的な人かと思っていたが、本作では役に入り込んで演技をしている。それだけに、彼の演技から作品に対する想いが伝わってくるように感じた。

ただ演技は素晴らしいが、事実を積み重ねただけの作品になってしまった。そのため、「展開が凄い」や「カメラワークが素晴らしい」という評価には繋がりにくいのは残念。エンディングのニコニコ動画のシーンは素晴らしいが、もう少し演出に工夫があれば…と思わなくはない。
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