とむ

Winnyのとむのレビュー・感想・評価

Winny(2023年製作の映画)
3.2
地味ながらも淡々と事実を描き切っていて、良くも悪くも「邦画的」な作品だなぁと言う印象の作品。


当時、2chで本当にあった騒動というのがとにかくセンセーショナル。
その時代にインターネットの恩恵は受けていたはずなのに、この事件について一切知らなかった。

こういう「インターネット絡みの事件」を描いた映画で「ネット弄ってる様な陰キャは犯罪者予備軍ですよ〜〜〜w」みたいな映し方をしてなかったのは好印象。

東出昌大の、地味ながらも確かにオタク的拘りを持つ技術者の演じ方も素晴らしく、
そういう人たちが必ず持っているであろう「初期衝動」の描き方にもグッとくる。

弁護士と依頼人という関係性ながら、共通の話題でつい熱くなる語らいの描き方も、ある種の青春感を演出していてよかった。
青春感と言うが、劇中で三浦貴大が言う様に結果的に10年以上の歳月をかけて理不尽と戦った二人は、ある種の親友でもあったろうなぁ。


ただ、実際の出来事自体がとてつもなく興味深いので物語にしたらそりゃーオモロいやろって話なんですが、映画としてのクオリティは決して高くないなというのが正直な感想。

とにかく、ショットが悉くヨリ&FIXで見ていてヒジョ〜〜〜に退屈なんですよね。

あとテンポがとにかく悪い。
編集が悪いのかなんなのか、役者さんの芝居が下手に見える様にしてるとしか思えない作りなんですよね…
せっかく東出くんとか、吹越満とか良かったのに。
原稿を覚えてそれを実演させるカットバックは「パラサイト 半地下の家族」でそのまま上位互換verが観られるので、そこはほんと見習ってほしい。

上記等の理由で、吉岡くんのパートが丸ごと不要に感じてしまったのが残念だったなぁ。


全体の印象として、「映画」って概念を教科書で学んだ監督、及びスタッフが見様見真似で作った作品という印象でした。
これなら「奇跡発見!アンビリーバボー」とかで再現ドラマとして見た方が臨場感あっただろうし感情移入もできて面白かっただろうなぁと思ってしまった。


それはそれとして、金子勇さんは同じ技術者として憧れるし、後世の表現者たちの権利や立場を守る姿には尊敬の念しかない。

「Winnyは、表現です。プログラミングでしかひとと会話する術を知らないので…」
いや〜カッコ良すぎだろ。
とむ

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