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ドリーミング村上春樹のゆのレビュー・感想・評価

ドリーミング村上春樹(2017年製作の映画)
3.8
デンマーク人翻訳家が村上春樹作品と向き合うドキュメンタリー。翻訳者メッテ・ホルムが村上作品中の言葉の微細なニュアンスを捉えるために日本を旅し、その中で自らと向き合うことで村上春樹的世界をより深く理解していく。
この作品の面白い点は普通のドキュメンタリーとは異なる所である。映像は完全なリアルではなく、村上春樹作品中(かえるくん東京を救う)のキャラクターであるかえるくんのCGを時折現実世界に登場させることで、世界の輪郭が曖昧に描かれる村上作品の世界をうまく描写している。
映画の中でも語られるが、村上春樹作品は現実と非現実の境界があやふやで、見知っていた世界が時折不可解なものとして立ち現れてくるような瞬間が多くある。かえるくんが街を歩き、世界を見つめる様は、この映画を観た我々をそのようなあやふやで不可解な世界へと連れ出してくれる。
ただのドキュメンタリーだと思って鑑賞したのでこういったフィクション的表現には少々驚いたが、素晴らしい試みだったのではないかと思う。
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