TaiRa

恐怖のセンセイのTaiRaのレビュー・感想・評価

恐怖のセンセイ(2019年製作の映画)
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ジェシー・アイゼンバーグが久しぶりに自分に合った役やってて良かった。

ブラックなユーモアで笑わせながら、ちょっと怖い人間の心理が描かれていて結構凄いと思った。「有害な男性らしさ」批評がほとんど観客に伝わらなかった『ファイト・クラブ』の失敗から学び、カリスマ的指導者の描写は徹底的にバカバカしく、そして暴力的に描く。この監督の前作もカルトについての話らしいので、そういうモチーフが好きな監督っぽい。自尊心の欠如や社会と協調出来ない性格、失敗体験や暴力被害のトラウマなど、自らの脆弱性を文字通り「自己防衛」する為に、偏執的な思想やカルトに傾倒してしまう人間の弱さが丁寧に描かれる。主人公が「男らしさ」に傾倒するまでの経験を段階的に見せるので、なぜ彼がセンセイに従ってしまうのかが分かる。イモージェン・プーツ演じる女性の過去にも、自尊心を傷付ける残酷な背景があり、そういった人々の「弱さ」に漬け込むセンセイの狡猾さが生々しい。最終的に明かされる様に、結局こういう人間は弱者から金を搾取する事しか考えていないという卑近さも嫌なリアリティがある。道場の奥にある「備品室」が見せられた時の異様な禍々しさが良い。突き放した暴力描写や死の見せ方が気味悪いが、基本的には謎のユーモアで彩られているので不思議な感覚。言葉を理解する犬のギャグとかネジが外れてる。
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