あなたのやさしさを何に例えよう

宝島のあなたのやさしさを何に例えようのレビュー・感想・評価

宝島(2018年製作の映画)
4.0
小さい子どもがつける、腕に巻くタイプの浮き輪懐かしい!

ボートでパトロールするスタッフがかっこいい

飛び込むと円状に広がる波がとても美しい
その後トランクに座って帰る夕方がなんて自由なんだ

24.03.03
自宅

[以下監督インタビューから]

生きている世界や文化的な背景がまったく違う人達が集まってきて、調和を保ちながら、ある特定の時間を過ごしている。そこには不安もなく、無邪気にただ休暇を楽しむことができる。そういう場所なのだと気が付きました。しかも、そこに集まる大勢の人々には、それぞれの人生があります。この映画では、それらの物語をモザイクのように描き出したく思いました。

あっけらかんとしているシーンがあったと思うと、ちょっとシリアスなエピソードに移ったり。時間の流れ、夏が過ぎていく様子、日中と夜の対比、天気の変化などをふまえて編集段階で物語を構築していくことによって、観客になんらかの感情や葛藤を与えたいと思いました。

──この場所が興味深いのは、自然が豊かですが、あくまで柵で囲まれているレジャー施設であることです。冒険が出来ると言っても、条件付きの“冒険”。それは、ディズニーランドや、もっといえば、ゲームの世界の“冒険”に共通する、守られた中での安全な“冒険”ですね。
今あなたがおっしゃったことは、この映画の核心を突いていると思います。とても興味深いですね。先ほど言ったように、このレジャー施設に久々に行った時に、とても自由な場所だと思いました。池があったり、ひっそりとした場所もあったり、美しい詩心のある場所。

でも、何回か通ううちに、条件付きの自由が味わえる場所なのだと気が付きました。人工的に作られた自然だし、禁止されているものも多く、ルールもあります。ある種、社会の“外”にある楽園的な場所だと思っていたのですが、実は、社会そのもののような気がしてきました。作り上げられたイメージが定着していたり、監視されていることによって、安全を確保しているという意味では、映画にとってとても興味深い場所です。自然の美しさを撮るのではなく、何かそういう人工のものを映画に収めることが大事だと思いました。なので映画の構成も、最初はビーチのような完全にコントロールされた場所から、段々とそれまで見えていなかったような、自由が感じられるような場所を映し出すように意図的に構成しています。

──社会性で言えば、子どもたちが忍び込んで警備員に捕まるシーンがありますね。あの場所は、ゴージャスなリゾート地ではなく庶民の憩いの場かもしれませんが、それでもその数ユーロが払えず、入場できない人々もいる。その分断を、レジャー施設を取り囲んでいる柵が象徴しているように見えました。フランスは移民の国で、人種や貧富による人々の分断は大きな社会問題になっていると思いますが、庶民の間でさえも持たざる者と持っている者の差が感じられることに関して、どれだけ意識的だったのでしょうか。
フランスでは、貧困の問題は、移民に限られたものではなくなっています。確かに5ユーロという入場料は高いとは言いませんが、でも、遠くの避暑地にバカンスに行けない家の子どもたちが、每日遊びに行けるような場所でもないですね。実は、20年前は無料だったのですが、いつの間にか有料になってしまいました。公共のものが民間の所有になった途端に有料になったという問題もあります。また入場料の問題だけでなく、この場所には、未成年は保護者と一緒でないと入れないという問題もあります。実際は、夏休みでも親が働いている家の子たちは、子どもだけで遊ばなければなりません。本来はこういう場所は、親からすると、子どもたちだけで遊んでいても、誰かが監視してくれているから安心と思える場所のはずなのですが。

偉大なバカンス映画とは、表層に現れているか隠喩的かは別にして、社会的な問題を孕んだ作品だと思います。単なる楽しいだけの作品ではなく。(ジャン・)ルノワールやロメールなどのバカンス映画の優れた作品には、階級社会など社会問題が少なからず描かれています。