生姜異物強壮

A Vigilante(原題)の生姜異物強壮のレビュー・感想・評価

A Vigilante(原題)(2018年製作の映画)
3.6
仮に自分が本作をプロモートするなら、キャッチコピーは「誰よりも泣き虫な仕置人(ヴィジランテ)が、誰知らず微笑みを手に入れるまで」──。

そう。ここで言う「ヴィジランテ」は自警団ってより、ズバリ仕置き人の意味合い。仕置くのは世に数多はびこる、家庭内虐待犯たち。

自身が夫に幼い息子を殺されたばかりで、しかも夫は未だ逃走中(おそらく近辺に潜伏中)……てな、とてつもなく危ない限界状況で(急に何を思ったか)DV退治の義賊に身を投じる孤高の一匹主婦を、オリヴィア・ワイルドが怪演してる。

どっぷりメンヘラな「闇の請け負い人」なんて、聞いたコトねえ。

強いて喩えりゃ、デニーロの『タクシードライバー』主婦バージョンって感じ? あのデニーロは無口だったが、オリヴィア版は無口な上に(ひとりに戻るってと)泣き濡れっぱなし。いじめられて、べそかきながら(いじめっ子に)パンチ繰り出してる幼稚園児みたい。純粋な悲しみの放つ鉄拳は、それなりに当たれば痛いのだ。

前述の基本プロットから、もう大半の観客にはラストの展開が予想できてしまうシンプルな筋書きながら、細かい描写が「随所に主婦目線」で、そのへんが従来のクライム・サスペンスに無かった新味を引き出してる。

たとえば仕置きの報酬が「手間賃ほどの現金、もしくは1食分以上の調理代行」とか、家事やってない男には理解できん取り決めだろにww  自分は男だが30年余、ずうっと独居主夫なんで「それイイな🌞」と思わず唸ったわww この映画自体が、ファミレスチェーンのメニューじゃなく家庭料理に近いんだろな。レンズの向こうに、ひと手間ふた手間を感じるよ。

最後に余談だけど(Youtubeでインタビュー動画を見たらば)オーストラリアの新鋭女流監督ニクソンさん自体が、見た目「クールビューティ」なんだね。もしも撮影現場でオリヴィアと居るのを遠目に見たら、どっちが女優でどっちが監督なんだか分からないw 何だか、お互いがお互いの分身みたいだ。