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血筋のKUBOのレビュー・感想・評価

血筋(2019年製作の映画)
3.0
2月8本目の試写会は『血筋』。

「中国朝鮮民族、初のドキュメンタリー映画」ということで、もっと民族に根差したドキュメンタリーかと思っていたが、かなりパーソナルなドキュメンタリーだった。

祖父母は中国で暮らす朝鮮民族。孫にあたる監督は10歳の時に日本に移住し、日本国籍を取得。かつて母と自分を捨て韓国に渡った父を探す旅に出る。

この父親が「本当にクソだ!」。18年ぶりに会った父がこんな人間だったら、どれだけショックだろう!

日雇い労働をしながら借金まみれの生活にもかかわらず、弟である監督の叔父からは一切援助を受け取るな、と説教する。息子の金で外食しているにもかかわらず、食べ残しを持ち帰ろうとすると「みっともない」と言って見栄を貼って残せと説教する。父親らしいことを何もしてあげられなかった等と言いながら、自分の借金の肩代わりをしろと言う。

この父の目が「子供」なのが怖かった。人生に真剣に向き合ってこなかった人間は、齢だけ取っても目が子供のままなのだ。

このドキュメンタリーを撮って、監督は「父親」を「祖父母」をどのように受け取ったのだろう? どんな思いで、この作品に『血筋』と名付けたのだろう? それを思うとかなり辛い。



*最後に、居酒屋で、再会した父が息子に酒を注いだ時に、隣りの席の年配の男性が苦言を呈する。「父に酒を注がせるなんて、なんて不道徳な息子だ」と言って怒る。18年ぶりの再会だからと言っても、かなりしつこく怒る。結局、監督は隣席の男たちに謝るのだが、韓国人の「年長者に対して示さねばならないくだらない上下関係」に愕然とした。親が子供に酒を注ぐ。いいじゃないか! どこが悪いんだ? こんな国だから難癖ばかりつけてくるんじゃないか(?)などと、要らぬことまで考えた。韓国人に必要なのは寛容さ、なのだろうな。
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