ポルりん

女雀龍伝  誕生篇のポルりんのレビュー・感想・評価

女雀龍伝  誕生篇(2001年製作の映画)
1.8
ストーリーだけでなく肝心の麻雀に関してもツッコミ所満載の作品。


あらすじ

伝説の代打だった父を殺された女子校生の愛は、仇を討つため自分も代打を目指す!
父・龍ニはかつて"鬼の龍"と呼ばれ、ヤクザの代わりに麻雀を打つ伝説の雀士だった。
愛は金子組の賭場に仇を打とうと一人で乗り込むが、男達に囲まれてしまい...。


基本的なストーリーは、大切な父をヤクザに車で轢き殺された愛が、小物ヤクザに復讐するというものになっている。
父の仇を取る手段として、通常の映画ならマシンガン・刀などで血祭りにあげたり、犯人に然るべき法の裁きを与えるなどの手段を講じる事が多い。
しかし本作の場合は、何故か麻雀で小物ヤクザを負かす事で復讐を遂げるという奇妙な方法を取っている。

ええ??
何で麻雀??

100歩譲って、父とヤクザが命を懸けた麻雀を行うが、結果、小物ヤクザの不正により父の命が失ったり、鷲巣麻雀で命を失ったなどなら復讐の手段に麻雀を選択するのも分かる。
だが本作の場合は、小物ヤクザからの麻雀の誘いを父が断ったから殺されるというしょうもない理由である。
こいつは、キモ男から飯の誘いを断ったという理由で姉が殺害されても、キモ男相手に早食い勝負でも挑むのか??

とりあえず、愛はしょうもない理由で父が殺された事に頭に血が上り小物ヤクザの事務所に乗り込む。
そして小物ヤクザに出会うなり、

愛「私と麻雀勝負をして下さい!!そして勝ったら土下座して下さい!!」

と、麻雀勝負を仕掛ける。
こいつの父の命は小物ヤクザの土下座と同じ程度の価値しかないのかと思うが、とにかく小物ヤクザが喧嘩を買い愛とヤクザの麻雀勝負が始まる。
麻雀勝負の中身としては可もなく不可もなくといった所なのだが、明らかに少牌しているのに誰一人触れなかったりと違和感を覚える箇所が少々見受けられる。
中でも一番気になったのが、小物ヤクザの麻雀の打ち方である。
麻雀の打ち方は人それぞれ違うと思うけど、普通は親の初巡で大四喜・字一色・四暗刻単騎を聴牌したらどうするだろうか・・・。
私が初巡でこんな悪魔じみた手が入ったら生まれたての小鹿並みに震えると思うが、まあその状態でもダマで待つだろう。
しかし、この小物ヤクザは何故か普通にダブル立直を選択する。
「アカギ 〜闇に降り立った天才〜」のアカギクラスの男なら、その状態でオープン立直をしても痺れるのだが、如何にも小物そうなヤクザがそんな事をやってもただの馬鹿にしか見えない。
まあ、愛は普通に振り込んでしまい敗北してしまうのだが、イケメンヤクザに救われる。

どうやらイケメンヤクザは、何故愛が父親を殺された恨みを麻雀で晴らす事に対して興味があるようだ。
そしてイケメンヤクザは愛に問いかける。

イケメンヤクザ「復讐なら別の手考えろ!!」(そりゃそうだ。)

イケメンヤクザ「なんで麻雀で復讐をするんだ?」(そうだ、そうだ!!私もそれが聞きたかったぞ!!)

愛「麻雀打ちの娘が麻雀で復讐するのは変ですか??」(いや、どう考えても変だろ!!麻雀でやられたんならまだしも、轢き逃げ犯に対して麻雀で復讐は・・・。)

ヤクザ「確かにそうか・・・。」

えええええええええええええ──っ!!
そんなんで納得すんの!!!
いくら何でもユル過ぎだろ!!!

まあユル過ぎるのは置いといて、その後イケメンヤクザが愛の父親のイカサマに憧れを抱いていたという事が明らかになる。

ん??
憧れ??

確かに冒頭部の雀荘で愛の父親が牌のすり替えをしていたけど下手過ぎて誰がどう見てもバレバレだと思うんだけどな・・・。
すり替えが下手だとしても、皆が自分の牌に集中してる配牌時にすり替えるのならバレないのかもしれないが、皆が注目する牌を切るタイミングでゆっくりすり替えてるからなぁ~~・・・。
いくら何でもバレるだろ・・・。
これでSEや編集で早く見せるように表現をすればいいのに、特に何もしないからな・・・。
物語上では愛の父親が伝説的に凄い人のようだが、表現力が乏しすぎて全くといっていいほど説得力がない・・・。

色々あってイケメンヤクザの弟子入りしメキメキと雀力を付けていく愛だが、やはり劇中での実力を全然映像に表現出来ていない。
牌の切り方など牌の扱いなどはそこまで違和感を覚えなかったが、イカサマに関してはかなりの違和感を覚える。
というのも愛は「哲也-雀聖と呼ばれた男」の哲也並みに大胆なイカサマをしているにも関わらず、イカサマをしている描写を一切映さないのだ。
だから、いくら言葉で巧みなイカサマをしたと説明しても実際に映像として表現していないから、全然説得力がない。
更に言うと、基本的に如何にも台本を読んでます感のある下手糞な演技をしているのに、麻雀関連のセリフになるとそれが更に強調され、噛みながら麻雀解説する。
麻雀を少しでもやったことがある人なら、劇中で皆から絶賛されている愛の雀力と、実際に映像に表現されている愛の雀力に対して確実に違和感を覚えるだろう。

そして物語の中盤、小物ヤクザが風の噂で愛がかなりの雀力を付けた事を聞きつけ、愛に麻雀で復讐される事に恐れてしまう。
少し悩んだ末、小物ヤクザが辿り着いた結論は麻雀ではなく殺害で解決するというものである。
恐ろしいまでの小物っぷりを発揮しているが、何故かターゲットを愛ではなくイケメンヤクザにするという意味不明な選択をしている。
普通、愛と麻雀したくないんならターゲットを愛にするんじゃないか・・・。
何でイケメンヤクザなんだ・・・。

嫉妬か!!
イケメンヤクザが女子高生からチヤホヤされている事に対する嫉妬なのか!!
確かに小物ヤクザの周りにはドブネズミのように汚らしい男しかいないから、嫉妬する気持ちが分からなくはないが、何で今なんだ!!
もしかしたら、イケメンヤクザを殺害して愛のメンタルをズタズタにしようと考えてるのかもしれないが、元々父親を殺された復讐の為に麻雀やってるやつにその手は悪手なんじゃないか・・・。
案の定イケメンヤクザが殺された事に対して一切凹まずに小物ヤクザに対して憎しみを増幅させただけだし・・・。

それにしても愛の周りで短期間に人が2人も殺害されたというのに警察は何をしているんだろうか・・・。
刑事の話に依ると、犯人が小物ヤクザと特定しているようだが、

刑事「目撃証言がないから打つ手なし、おめえの親父とイケメンヤクザの操作はお手上げだ・・・。」

そうか・・・犯人を特定しても目撃証言がないんじゃ逮捕出来ないか・・・。
ってんな訳あるか (゚Д゚)ゴルァ!!
どんだけ無能なんだよ ( ゚Д゚)ドルァ!!
目撃証言ないと捕まえられないんだったら、大半の殺人事件は未解決事件で終わっちまうよ!!
てか犯人が分からないならまだしも、ほとんど分かってる状態なのに何してんの??
何の為の科学捜査だよ ( ゚Д゚)ヴォケ!!

この刑事の無能っぷりを見ると、愛が司法に頼らないで自らの手で復讐しようとする気持ちは理解できる。(麻雀で復讐は意味不明だけど)

そして、何らかんらで小物ヤクザと愛が麻雀で勝負する事になる。
序盤は小物ヤクザが卑怯な手を使いピンチに陥る愛だが、無能刑事とメールのやり取りをする事で状況を打開し、愛が優勢になる。
ピンチに陥った小物ヤクザが取った行動は、積み込みの最高峰「ツバメ返し」である。
しかしながら積み込みが遅すぎる!!!
ツバメ返しするのに何と時間が7秒も掛かってるではないか!!!
いやいや、いくら何でもバレバレ過ぎだろ・・・。
相変わらず何かしらの編集や特殊な演出が入る訳でもないから、皆にバレてないという説得力が微塵もない。
とはいえ、一応愛にだけはバレていたようで天和を阻止される。
怒り狂った小物ヤクザは国士13面待ちでダブル立直という意味不明な立直をするのだが、結果的その立直が原因で愛に「大車輪」を振り込み敗北する・・・。

更に怒り狂った小物ヤクザは愛を銃で撃ち殺そうとする。
しかし、無能刑事が登場し、小物ヤクザに強力なビンタを食らわせる事で愛のピンチを救う。
そして小物ヤクザが落とした銃を愛が拾い、

愛「お父様の仇ぃぃ!!」

とばかりに小物ヤクザに向かって発砲する。
視聴者の誰もが分かっていたと思うが、やはり麻雀で小物ヤクザに勝っても気は晴れなかったらしい。
もしかしたら、

愛「私と麻雀勝負をして下さい!!そして勝ったら土下座して下さい!!」

という勝ったのに土下座をしなかったのに対しブチギレて小物ヤクザを殺害しようとしたのかもしれないが・・・。
幸いなのか、弾は小物ヤクザの頭ではなく右腕に当たったので小物ヤクザは右腕の負傷だけで済んだ。
完全に傷害罪なので愛が警察に連行されるのかと思いきや、何故か連行されるのは小物ヤクザだけであった・・・。

んん??
どういう事??
確かに小物ヤクザは愛に対して殺人未遂+銃刀法違反で連行されるのは分かるが、何故愛は連行されないんだ・・・??
拳銃でヤクザを負傷させているから完全に傷害罪だし、別に命の危機に晒された状態じゃないから正当防衛にもならない。
そして散々目撃者がいないから逮捕出来ないと言いながら、刑事含め20人以上目撃者がいる状態なのに逮捕されない・・・。

目撃者関係ないじゃねーか ( ゚Д゚)ドルァ!!
しかもこっちは現行犯だぞ ( ゚Д゚)ゴルァ!!
どう考えても「殺人未遂+銃刀法違反」の小物ヤクザよりも「殺人未遂+傷害罪」の愛の方が罪重いだろうが ( ゚Д゚)ヴォケ!!

銃で撃った本人が良く頑張ったと称賛され家に帰され、撃たれた人は警察に連行される・・・。
一体どういう事だってばよ!!!

そして無能警察と小物ヤクザがパトカーで去っていき、「殺人未遂+傷害罪」で連行されないからの安堵からか、愛が満面の笑みを浮かべて物語は終結する。

昔から権力者、もしくはそれと仲が良い人は犯罪を犯しても逮捕されず不起訴になる事が多い。
一見すると本作は父の仇を麻雀で取るという話だが、実は資本主義に対するアンチテーゼ的なメーセージを込めた深い作品ではないだろうか・・・。
ポルりん

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