NicoJay

ブレイム・ゲームのNicoJayのネタバレレビュー・内容・結末

ブレイム・ゲーム(2019年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

ヨーロッパ(ドイツ)の映画らしい地味でゆったりした進行と、すっきりしないラストが印象的です。

タイトルの『ブレイム・ゲーム』って何だろうと思ったら、非難する・咎めるなどの意味を持つ blame であるらしく、Gameも含めて訳すと「咎め合い」「責任のなすり合い」といったところ。
ちなみに原題の『das ende der wahrheit』はドイツ語で「真実の果て」みたいな意味。最後まで観るとやはり原題のほうがしっくりきます。

※ここから派手にネタバレします。

軍事会社が利益を上げるため、ドイツ政府に武器の禁輸措置を解除させようと画策。様々な非合法かつ非人道的な手段に訴えます。それを内部告発しようとした社員が、女性記者に話を持っていくというのがそもそもの始まり。
さてそこで、女性記者が主人公(ドイツ政府機関の情報員)の恋人というのは都合が良すぎます。
それのみならず登場人物が妙に少ないので、低予算映画なのかなと思ったりしました。

軍事会社が情報漏れをふせぐため雇った”プロの殺し屋たち”に恋人を殺された主人公は、躍起になって陰謀を暴こうとしますが、相手が巨大すぎて刀折れ矢尽きた状態に。
ここまでで1時間45分のうち1時間半近く使っています。

そしたら!打つ手がなくなり落ち込んでいる主人公に、検屍官が女性記者の遺品を手渡します。するとその中に陰謀を録画したメモリー(内部告発者が提供した動画のコピー)が隠されているのを発見!!そして最後の10分で大どんでん返し!!!
って検屍官の登場、タイミング良すぎるでしょうw

最終的に、ストーリーの核である軍事会社の陰謀は、政治的判断によって社会に明らかにされないままとなります。
なんでも、中央アジアでテロ組織と戦っているNATO軍の後方支援を幅広く手掛けている会社であるため、直ちにどうこうはできないのだとか。
もしやっちゃうとNATO軍が弱体化し、テロ組織の支配地域が拡大、難民が激増するという理屈です。
ここで難民問題を入れ込んでくるあたり、ドイツ映画らしいといえばらしいですね。
とはいえ結局のところ人の命よりお金、という結びでした。

ひるがえって今の現実を見ますと、2022年1月24日から23年5月31日の期間に、欧米各国・カナダ・日本などが総額2000億ドル(約30兆円)を超える支援をウクライナへ提供。最多の米国は約768億ドル(約11兆2千億円)で全体の3分の1以上を占めます。
映画は2019年の作品ですから、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻とはまったく関係ないのですが、このへんもいろいろあるんだろうなぁと思わされます。

というのも、米・NATO軍がアフガニスタンから撤退したのは2021年9月。
それから半年もしないうちにロシアがウクライナへ侵攻したと大騒ぎ。そしてウクライナに対し莫大な金額の支援を開始。
ですがロシアの侵攻は今に始まったことではなく、2014年にクリミアへ軍事介入。ドンバス、ルガンスク、ドネツク等では親ロシア分離独立勢力に物資支援と軍事支援の双方を供与。これらの地域では内戦や反乱によって何万人もの死者が出ていましたけれども、報道の規模が小さかったため多くの人がそのことを知りませんでした。
それがなぜ、ワシントン・ポスト紙のスクープを皮切りとして急に大騒ぎし始めたのか。
2022年1月から始まった30兆円を超える支援は何にどう使われたのか。
1年半を経て依然として拮抗状態にあるのはなぜなのか。
とか考えると、あのプーチンでさえが踊らされているのかも?
(映画の余韻からくる妄想です 汗)
NicoJay

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