りょう

静かな雨のりょうのレビュー・感想・評価

静かな雨(2020年製作の映画)
4.0
静かな夜に、静かな映画を観たくて、中川龍太郎監督の作品を選んだ。

片方のハサミがないザリガニと、隠した胡桃を忘れてしまうリス。淡々と、だけど作品の情景に入り込めるように計算されたBGMがユキさんとこよみさんのいる世界に没頭させてくれる。作品に乗ってしまった些細な環境音すら、作品のためのBGMとすら感じる。

事故前の記憶はきちんと覚えているが、事故後の記憶は寝て起きるたびにリセットされる状態。毎朝「ここ、ユキさんち?」「雨上がったね」から始まる1日。ユキさんの対応が日を重ねる度に少しずつ変わっていく。自分と過ごした記憶が蓄積されない状況に、日に日にやり場の無い思いに苛立ってしまう。

多くを言葉で語らず、情景で語る中川龍太郎監督の作品はとても好きで、二つになったベーコンエッグ、食卓のブロッコリー、静かな雨と月など、さりげない画に心を動かされる。

静かなクライマックス、部屋のあちこちから発見されるリスが隠した「胡桃」。どうしても記憶を繋ぎ止めたいというこよみさんの気持ちが愛おしい。

作品の冒頭、こよみさんの声だけを聴いた時、あっ、この声好きだ、と感じた。衛藤美彩さん存じ上げませんでしたが、また別の作品もチェックしたいなと思います。そして安定の太賀!自分のことを話さないユキさんが最後の最後、感情を爆発させるシーン、色んな感情を抑える演技との対象でものすごい良かった。さすが。

やっぱり中川龍太郎監督の作品が好きです。
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