TaiRa

さすらいのTaiRaのレビュー・感想・評価

さすらい(1975年製作の映画)
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旅のルートだけ決めて、本は即興的に作っていったらしい。人物から映画を生む作風の最終形。

冒頭のビートルを爆走させたまま川に突っ込むとこから狂ってる。二人の男が出会い、旅をするにつれて親友となっていく3時間。この時間は必要だったなと観終わって思う。最初は相手が何者かも分からないまま、男らの旅は始まる。映写機の修理をして回るブルーノとそれに同乗するローベルト。プロローグでの映画館館主との会話にも示されるように、変化していく時代の流れ、終わっていく文化、全てが変わりゆくという話でもある。その変化に適応出来ず、未来へ踏み出せない男たちのさすらい。今ではロストテクノロジーとなった活版印刷機もフィルム映写機も、まだ現役だった当時にハッキリと滅びゆくものとして描いてる。「街に一つずつ映画館が残ればいい」という願望も今聞けば切ない。過去を見つめて国境まで彷徨い、変化を受け入れた男たちの再出発に泣く。並走する二者の演出のエモさよ。『ワイルド・スピード SKY MISSION』のラストみたいな。クロスして離れていくのも完璧。旅路のディティールを楽しむ映画だけど、野糞を見せられた時はびっくりした。映画でリアル野糞は初めて見た。女性映画館主との形容し難い一夜がエピソードとしては一番好き。
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