シネマの流星

さすらいのシネマの流星のレビュー・感想・評価

さすらい(1975年製作の映画)
5.0
ジュデマリ『Over Drive』のようなワンピースのリュディガー・フォーグラーが愛おしい。

映像はモノクロだが、ふたりの沈黙に色があり温もりがある。乾いた広野のなかに湿度がある。ヴェンダースは沈黙という旅を見せてくれる。キャンピングカーは男たちの人生を映す銀幕。この時代はタバコ税もレジ袋税もなかった。物はないが縛るものも少なかった。自由というプレッシャーとも闘う必要がなかった。

車を喪失した男と車に乗り続ける男。四輪のキャンピングカーから二輪のサイドカーへ。ふたりの心の距離が詰まっていく。四輪の車に戻ったとき一枚のレコードをセッションする。人生は映画のフィルムであり、車輪でもあり、車のハンドルでもある。やがて、ふたりは離れ一輪へ。それでも男たちは人生の映写機を回し続ける。
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