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おろかもののslowのレビュー・感想・評価

おろかもの(2019年製作の映画)
4.2
失うとわかっていても開き直れないから、わからないふりをするのであって、はたから見ればきっと、わからずやにすらなり切れていないのだろう。茶番を演じているのがあなたでも、わたしでも、ラストシーンを一緒に見たいと言った台詞に偽りはないタチの悪さと、幸せひとつ作るのに愛はいくつも要らないだとか、誰かの不幸せを願えば割りを食うのは自分だとか、この暮らしとは別の手間、ありあまる所業もろとも信じてしまうものだから、もう収拾がつかなくなる。偶然付いた傷が美しい思い出を残してしまうこと。それを一回でも幸せと呼んでしまったこと。わたしは長い間握りしめていたその痛みを、愛しいものと同じに窓辺に並べ、ふと気が付けば眺めてしまう。そういう人間だ。
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